「春のキャンプで、いちばん気を遣うのは、やっぱりルーキーです。ルーキーでもいろいろいますから、担当のスカウトに訊いたりして、まず性格を知ること。高校生でも自信満々で『すぐにでも試合で投げます！』みたいなヤツは、絶対褒めちゃダメ。気持ちを煽ってしまって、オーバーペースになってパンクします」  

　最近の大学生や社会人は、すでにアマチュア時代に知識も豊富で、考えた練習をしてきているので、扱いは一軍投手と変わらないという。

「ただ、自分の持ちネタをアピールしようとし過ぎる傾向もありますね、最近は。きれいに投げようとして、いちばん肝心の＜腕を振る＞という大前提が二番目、三番目になってることがある。ルーキーの初めてのキャンプですから、フレッシュさとか、若々しさも引き出してあげたい。監督、コーチが見たいのも、そこじゃないですか。そういう時は、前もってちょっとアドバイスしてストレート多めに投げてもらって、ミットもボールの当たりのいい硬めのミットを使ったりして」

昨年のドラフトで唯一、高校生投手でドラ1指名となった大阪桐蔭の前田悠伍　©Nanae Suzuki

　そういえば、どこのチームのブルペン捕手の方たちも、すぐ手が届く場所にミットを2つ、3つ置いて、受ける相手によって使い分けていた。

　隣で受けていた捕手のミットを自分の手にはめて、ポンポンやって、ご同業の「武器」を研究しているブルペン捕手の方を目にした時は、軽いショックを受けた。ライバルがいるのは、現役の選手たちばかりではない。

「プロのピッチャーっていっても、みんな人間ですよ。去年みたいなボールが今年も投げられるのか、自分よりすごいボールを投げるのが出てくるんじゃないか。根っこはビクビクしてるんです。だから、褒めるのも大事。口先だけの『ナイスボール！』じゃ、ピッチャーが本気にしません。いいボールだなぁと思ったら、その感動をそのまま『ナイスボール！』って叫びに乗っけてね。今の若いのは、それができない」

「ブルペンを軽視する捕手」は投手に信頼されない？

　ルーキー投手も気になるが、新人捕手も少ないだけに、もっと気になるという。

「どれだけ大物といわれて入ってきても、まずブルペンをしっかりつとめられないと、プロはつとまりません。ブルペンの仕事がいい加減だったり、軽視してるようなキャッチャーは、ピッチャーが絶対に信用しない。ブルペンでピッチャーたちに信頼されることが、若いキャッチャーのスタートなんです」

　唐突に質問が飛んできた。

「たとえば、ピッチャーが10球投げるのに要するエネルギーと、キャッチャーがそのボールを10球捕球するエネルギーの違いって、どれぐらいか知ってますか？」

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