若島津は1987年に現役を引退、1990年には松ヶ根部屋（当時）を興す。結婚当初は、元歌手に力士の妻が務まるのかという声もあったが、みづえ夫人はそれを覆すように相撲部屋のおかみさんとなってからもその役目を見事に果たすことになる。2017年に当時二所ノ関親方になっていた夫が病気で倒れたときも献身的に支え、危機を乗り越えた。2022年初場所後、夫が相撲協会の定年を迎え、部屋の看板を下ろしたのにともない、彼女もおかみさんをめでたく卒業している（夫は定年後も「荒磯」の名で相撲協会に参与として残ったが、翌2023年7月に退職した）。

1985年9月27日、大関・若嶋津と歌手・高田みづえの結婚式（東京・千代田区のホテルニューオータニ）　©JIJI PRESS

「昨夜はどうでした？」「バ、バカッ！」

　1971年には、力道山亡きあとのプロレス界を担ったジャイアント馬場とアントニオ猪木があいついで結婚式を行った。

　この年11月2日に披露宴を行った猪木の相手はよく知られるように、女優の倍賞美津子である。猪木は婚約発表後、新聞の見出しに「倍賞美津子、猪木、結婚」と自分の名前があとに記されているのを見て少し落胆したらしい。倍賞はまだそれほどのスター女優ではなかった。それにもかかわらず、自分がこういう扱いをされるのは、プロレスがまだマイナーだからと考えた彼は奮起すると、披露宴の会場にオープンまもない京王プラザホテルを選び、総額1億円をかけて大々的に行った。

1971年撮影、アントニオ猪木と倍賞美津子。2人はこの年の11月2日に披露宴を行った　©AFLO

　終宴直後、夫妻は記者会見にのぞんだ。このとき、「昨夜はどうでした？」との質問に、猪木が「試合が遅くまであったので、このホテルに泊まりました」と答えると、倍賞が付け加えるように「朝、起きたら、『トレーニングに行って来る』って、置手紙があって……」と言うので、彼は「バ、バカッ……！　そんなことを言ったら、結婚前に一緒に過ごしたことがバレちゃうじゃないか！」と赤面した。これには一瞬の間を置いて報道陣から爆笑が起こったという（端佐富郎『アントニオ猪木』新潮新書、2022年）。二人はのちに一女を儲け、メディアにもたびたび夫婦そろって登場したが、1987年に離婚している。

「お母さんを悲しませないで…」

　一方の馬場は猪木に先立ち、1971年9月16日にハワイのカハラ・ヒルトンホテルで、7年にわたって交際を続けてきた実業家令嬢の元子夫人と挙式している。それ以前よりプロレス界では二人は公然の仲であったが、彼女の母親が結婚に猛反対しており、なかなか許してもらえずにいた。

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