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プロ野球PRESSBACK NUMBER
阪神の守護神・岩崎優が明かす日本シリーズ「大逆転劇のブルペンで起きていたこと」32歳が貫く“鉄仮面”の流儀「スイッチが5段階あるなら…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byShunsaku Sakai
posted2024/03/06 11:01
新シーズン開幕に向け、守護神は静かに準備を進める
阪神の攻撃はなかなか終わらない。岩崎はブルペンで投げては、椅子に座って戦況を見つめた。味方が逆転した瞬間も感情を高ぶらせることなく、静かに頷くだけ。ふつふつと湧き上がる闘志を制御していた。
彼は出番を待つ間、いつも欠かさず行う作業がある。相手チームのベンチ入りメンバーの整理である。途中出場した選手をオーダーに当てはめていく。
心身を整える時間
オリックスの9回表の攻撃は9番の投手・阿部翔太から始まる打順で、当然、代打の場面である。その後、1番の廣岡大志、宗佑磨へと続いていく。ベンチに残るのはレアンドロ・セデーニョ、大城滉二……。岩崎は展開を先読みしていた。
「代打に大城選手が来ることは、ある程度は頭にありました。いつも、残りのベンチのメンバーを見て、誰と当たるかなと考えています。オリックスはなかなか読めないところもありましたけど、普段やっているセ・リーグのチームなら分かります」
出番が来るまでは、心身を整える時間である。ブルペンの岩崎は8回表から体を動かし始める。8回裏に投球を開始し、13球ほどで仕上げてマウンドに向かう。これが日常である。この日も9回を見据えて投げた。対戦する打者を打ち取るイメージを膨らませていた。大一番でも、普段と同じように考えを巡らせていた。
目にしてきたクローザーの姿
円熟味を帯びる岩崎のブルペンでの言動は先輩たちから学んだものである。プロ1年目の2014年から3年間は先発要員だったが、17年以降、本格的にリリーフに転向。そこにはメジャーリーグから復帰した藤川球児がいた。ラファエル・ドリスやロベルト・スアレスといったセーブ王に繫ぐ役回りもこなし、経験を重ねていった。