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プロ野球PRESSBACK NUMBER
阪神の守護神・岩崎優が明かす日本シリーズ「大逆転劇のブルペンで起きていたこと」32歳が貫く“鉄仮面”の流儀「スイッチが5段階あるなら…」
posted2024/03/06 11:01
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Shunsaku Sakai
昨年38年ぶりの日本一をつかんだ阪神タイガース。その胴上げ投手になったのが32歳のサウスポー、岩崎優投手だ。さまざまな思いを秘めてのぞんだ日本シリーズの秘話、クローザーとして仲間に示した矜持とは――。(全2回の前編/後編を読む)
「クローザーは臆病なくらいがちょうどええんよ」
昨季、阪神を日本一に導いた岡田彰布監督の持論である。もしも、岩崎優が自信家だったら、昨年のタイガースの歩みは違うものになっていたかもしれない。マウンドで表情を出さない「鉄仮面」は、彼が並みいる猛者と渡り合うための術である。
一つだけ聞いた質問
岩崎の生き方が滲んだ試合がある。昨秋、オリックスとの日本シリーズは2勝2敗で第5戦を迎えていた。2点劣勢の8回裏に逆転し、岩崎が9回のマウンドへ。3者凡退で日本一に王手をかけた。甲子園のクラブハウスに向かう勝者たちは声をはずませ、遠くからはハイタッチを交わす雄叫びも聞こえてくる。最高潮のムードである。
こんな時、記者に囲まれた選手は、いつになく饒舌になる。だからこそ、ニコリともせず、俯きながら問いかけに応じる岩崎が異質に映った。ひとつだけ、彼に聞いた。
「8回裏の攻撃をブルペンのモニターで見ていたと思うが、気持ちは高ぶったか」
すると、間髪入れずに言う。
「一緒ですよ、自分は。感情はあんまり、そこで動かさないようにしているので」
岩崎のプロフェッショナリズム
立ち止まって話す囲み取材はわずか46秒。雄弁とは程遠く、「塩対応」のイメージも定着したが、ともすれば聞き流してしまいそうな、この短いひとことはブルペンに生きてきた男のプロフェッショナリズムを濃厚に発していた。