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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「高校では一度もベンチ入り経験なし」でも大学時代は“MAX120km台”で空振り量産…ソフバンキャンプで見つけた《育成10位》隠れた「逸材」のナゾ
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by日本文理大公式HPより
posted2024/02/27 06:00
昨年、育成10位で日本文理大からソフトバンクに入団した前田純。宮崎キャンプに帯同するなど、飛躍を期す
中学、高校時代はベンチ入り経験もなし
育成選手なのだから、普通なら「筑後」の若手キャンプだろう。抜擢された「宮崎」のはずなのに、落とされたくない、落とされたらどうしよう……みたいなビクビクした重苦しさが伝わってこない。今、宮崎のブルペンで、多くのファンの視線を浴びながら投げられることが嬉しくてしかたない。そんなフレッシュな若々しさだけを発散して、見ているこっちまで、なんだかなごんでしまう。
「親御さんの仕事の都合で、シンガポール生まれの沖縄育ち。高校は中部商業なんですが、一度もベンチ入りのメンバーに入ったことはないはずです、はい、おそらく中学時代も含めて」
ならばどうして日本文理大・中村壽博監督、そんな前田純投手に声をかけたのか。
「キャッチボールです。キャッチボールが抜群でした。フォームのボディバランスもよかったし、リリースで指にかかる率がすごく高かった」
高校では実戦経験ゼロに等しい前田投手だったが、連日のひたむきな練習と吉川輝昭投手コーチ(元横浜、ソフトバンク)の熱心な指導で、日本文理大3年生から公式戦に登板するようになる。
「とにかく、1球も気を抜かない。試合でも練習でも、どれぐらい投げるんだ?って訊くと、必ず『最後まで投げる!』って言うんです。高校までぜんぜん投げてないから、とにかく投げたくてしょうがない。多分、今もそうだと思いますよ。投げたい意欲は無限大のヤツですから」
なるほど。それで、あのイキイキしたブルペンの表情だったんだ。
「全体練習が終わっても、ずっとキャッチボールやってましたね。それでいて、一度も故障したことがない。いや、それどころか、痛いって言ったことも一度もなかった。こりゃあ、体が出来て、キャリアを積めばよくなる一方だなと思ってました」
心配だったのは、なかなかスピードが出なかったことだという。
「4年生でも120キロ台。それなのに、128キロの速球で空振りの三振取ったりしてる。不思議に思ってたら、ラプソードでとんでもない数字が出た」