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「俺んち、泊まれば?」遠藤航に密着TVディレクターは見た…リバプールで愛されるまでの“壮絶な1カ月”「ファウルしないとかあり得ない」
text by
小野晋太郎Shintaro Ono
photograph byPA Images/AFLO
posted2024/02/24 17:00
プレミアリーグで首位を走るリバプールで定位置を確保した遠藤航(31歳)。人生最大の勝負と位置付けた12月、どんな心境で戦っていたのだろうか
当時、遠藤はW杯予選を戦った日本代表から復帰したばかりだった。もともと、夏の移籍期間の終盤にリバプールにやってきた。ここまで集中してチーム練習を参加する時間はほとんど取れていない。故に、プレミアリーグ前半戦最大のこのビッグマッチで、指揮官ユルゲン・クロップから声がかかることは、遠藤自身も予期していなかった。
「ワタ、いくぞ」
85分にピッチに投入された遠藤は、最初のセットプレーでハーランドのマークについた。ピンポイントにボールに合わせる194センチの巨体を178センチの日本人が跳ね返す。余りの迫力にスタンドは一瞬ザワついたが、遠藤は気にもとめない。ハーランドだけでなく、世界各国の代表選手、それも各国の中心選手しかいないピッチ。落ち着く暇は一瞬もない。
次の瞬間、遠藤はあれ狂うドリブルで突き進むベルギー代表のジェレミー・ドクをスライディングで深く削る。響き渡るブーイングとイエローカード。プレミアに来てから、ブンデスでクリーンなイメージだった遠藤のファウルの数が相当増えた。
「ファウルしないとかあり得ない」
リバプール移籍直後、遠藤は目の肥えたファンから激しい批判にさらされていた。
「スピードがとか、判断が、とか、ファウルのことを言われていることも知っていますよ。まぁそもそも、他人の批判は気にしないけど、あえて答えるなら、俺の役割は結局、止めればいい。ただ、前提として、日本人がファウルで止めないと思われているんだとしたら、それは俺が変えないといけないと思っています。クロップのサッカーで、アンカーで、ファウルしないとかあり得ない。リバプールの6番(アンカー)はそんな簡単なものじゃない」
シティにはスペイン代表ロドリ、アーセナルにはイングランド代表デクラン・ライスと、プレミアリーグには、心臓部分を支える世界最高峰のアンカーがそろう。しかし、ビッグクラブのセンターラインを任せられる選手は、世界のリストを見渡してもそうはいない。そんなポジションを、しかも、一際攻撃的なクラブにおいて、30歳でプレミア初挑戦の日本人に託された。強度と重圧、そしてプライドがある。