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バレーボールPRESSBACK NUMBER
「関田に続くもう一人のセッターは誰か」男子バレー“最大の課題”を選手はどう思ってる? 山本龍23歳のホンネ「ブラン監督が求める役割は…」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNoriko Yonemushi
posted2024/02/23 11:05
今季ディナモ・ブカレスト(ルーマニア)でプレーする山本龍。バレーボールだけでなく語学習得にも奮闘中だ
パリ五輪予選後、レベルアップを目指して臨んだルーマニアでのシーズン。まずぶち当たったのは言葉の壁だった。チーム内のやり取りは英語だが、最初はまったく理解できなかった。
「外国に行ったら話せるようになるって言いますけど、自分はならないと思った。昔勉強していて、その貯金がある人は徐々に思い出すと思うんですけど、自分は貯金がないんで、どうあがいても無理なんです。英語は毎回テストで1桁とか、そのレベルでしたから(苦笑)」
このままではマズイと、オンラインで英語レッスンを受け始めた。「ほんとに“I am”から始まりましたよ」と苦笑するが、週に2回ほど、2時間近い授業を地道に続けている。
もう一つ戸惑ったことはスパイカー陣の「トスを選ぶ」気質だ。これまで共にプレーしてきた日本人スパイカーは器用で選択肢が多く、ある程度の範囲のトスは何とかしようとしてくれた。しかしディナモ・ブカレストでは、不器用で荒削りなスパイカーが多いこともあり、トスをピンポイントに持っていかなければ何とかしてくれない。ブロックされたりミスをすると、若手で英語を話せないこともあり、山本のせいにされた。
「日本とは違いますね。日本だと守られているというか、言い方にしても、日本人はあまりストレートには言わずに少し濁したりするので、ダメージはあまりなかったんですけど。日本ではトスを選ぶというのがなかったので、初めてです。やっぱりセッターは難しいなと思いましたね」
救いになった同志の存在
そんなとき救いになったのが、同じく海外でプレーするオポジットの宮浦健人(パリ)やリベロの築城智(ベルリン)だった。
「2人とは時差が1時間だけなので、よく電話して共有して。こうなんですけどって話したら、『ま、そんなもんだよー』って(笑)。そういう話ができる存在はすごく大きかったです。めっちゃ信頼を寄せてるんで」
要求の多いスパイカー陣に応えることで、自身のトスの精度が上がると捉えてやってきた。少しずつ英語も習得し、今では言い返せるようにもなった。
「日本人って優しいから、つい『ソーリー』って言ってしまっていたんですけど、そうじゃない。自分もプロとして来てるんで。今は『あなたのミスだ』とか『あなたのチョイスが悪いよ』みたいなことは言いますね」
ルーマニアリーグはヨーロッパの中でレベルが高いほうではないが、日々直面するコミュニケーションの難題やセッターへの要求に応えるうちに、選手としてだけでなく人として、鍛えられているという実感はある。
「こっちに来て改めて、自分は技術がないなと感じています。先のことを考えると焦りはあるんですけど、『今自分に必要なことはなんだろう?』って、必死に目の前のことにフォーカスするのがいいのかなと思っています。ひたすらに」