酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「山川選手、頑張って」ファンの声、球場外周に“山川穂高の顔”はないが本人は守備練習で…“テレビに映らない”ソフトバンクキャンプ風景
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2024/02/17 11:01
守備練習に励む山川穂高
先発から救援に転向して3年目、まだチームに貢献したと言えるだけの実績を上げていない。その思いを表すかのように早いピッチで投げ込んでいる。
一番右側のレーンでは背番号50の板東湧梧がマウンドに上がった。昨年は救援で開幕を迎え、6月から先発に転向して5勝を挙げた。ローテの一角を担うことが期待される28歳だ。育成捕手と打ち合わせをしながら投げ込んでいる。
MLBで指導者留学した倉野コーチも熱視線
加藤の真後ろで腰をかがめて、板東の投球の球筋、回転を見極めようとしているのが倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)だ。ホークス生え抜きで、投手指導に定評のある名コーチは、2022、23年とMLBテキサス・レンジャーズにコーチ留学をしていた。
2023年はレンジャーズ傘下マイナーチームの投手コーチとしてメジャーリーガーの卵を指導。他球団からのオファーもあったようだが、満を持してのホークス復帰となった。それだけに投手陣立て直しの切り札としての期待がかかる。この日も板東をはじめ、各投手の投球を見極め、細かな指示を与えていた。倉野コーチが目を光らせるとなると、ブルペンも引き締まった空気になる。
その中で又吉克樹と東浜巨がブルペンに上がり、にわかに豪華さを増す。
又吉はサイドスローから流れるような投球を見せる。東浜はゆっくりと始動して徐々に調子を上げていく。このあたりの実績のある投手は、調整は投手自身に任されている印象だ。
途中で又吉と東浜は投げるレーンを交換した。どういう意味があるのか?と思ったが、トラックマンの設置されたレーンで投げていた又吉が、計測が終わって東浜と交代したようだ。
スチュワート、又吉、東浜がデータを見ながら…
その2人から少し遅れて、ヒーターで指先を温めていた大男がマウンドに上がった。背番号2、カーター・スチュワート・ジュニアだ。2018年、高校卒業時にMLBアトランタ・ブレーブスから1巡目(全体8位)で指名された超エリートだったが、契約合意に至らず、翌2019年5月にソフトバンク入りが決まった。
198cmの長身から繰り出す100マイルの剛速球は圧倒的だが、課題は制球力。2022年までは一軍ではわずか11試合に投げただけだったが、昨年6月に久々に一軍のマウンドに上がり、以後はローテーションを維持し、3勝6敗ながら防御率3.38と進歩の跡を見せた。