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「クビでも仕方がない」箱根駅伝“まさかのシード落ち”…その夜、中央大・藤原監督は4年生に頭を下げた「青学大を抜く、幻のレースプラン」
posted2024/01/31 11:21
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Wataru Sato
集団発熱、まさかのシード落ち……今年の箱根駅伝、優勝候補の一角と見られていた中央大学。13位に終わったチームに何が起きていたのか? 藤原正和監督がNumberWebに明かす。【全2回の後編/前編から続く】
◆◆◆
「それって……」
藤原正和監督の「進退問題」という言葉を聞き、私は監督が辞める覚悟をしたのかと、慄いた。
2016年の予選会敗退からここまで這い上がって来られたのは、監督がいなければ成し遂げられなかっただろう。藤原監督はうつむき加減で言葉をつぐ。
「狙った大会で、こんな結果しか残せず、学生に申し訳ないです。本当に、申し訳ないです。8年間指導して、土台がしっかりしてきたという手ごたえはあります。ひょっとして、指導陣に新しい風が吹いた方が、優勝に近づけるんじゃないかと思います」
それ以上の言葉をかけることはできなかった。
これだけの痛みに対して、外部の人間は有効な言葉を持たない。いや、持てない。
「10日ほど、ほぼ眠れませんでした」
1月下旬。
箱根駅伝から3週間が経った。
日野市にある中大の合宿所に向かい、藤原監督を取材することになった。卒業を控えた4年生が引っ越しの準備に追われていた。
私はまず、1月3日に進退問題について言及した後、藤原監督はどんな時間を過ごしたのか聞くことから始めた。
「3日には毎年、4年生の慰労会があります。その場では4年生に頭を下げるしかありませんでした。正直なところ、私自身、疲労困憊という状態でした。ショックでしたね。ターゲットとしてきた第100回箱根駅伝なのに、わずか10日間の出来事で、すべてが崩れてしまったので……」
1月4日の朝も、早く目覚めてしまった。それでも安堵があったという。