サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
ラモス瑠偉に「文句言うなら来ないで」、あの名SBは起用法に激怒…“大モメした日本代表”がアジアの頂点に立つまで「森保一は“陰のMVP”に」
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKazuaki Nishiyama
posted2024/01/22 17:00
1992年、自国開催のアジアカップで優勝を果たしたサッカー日本代表。強烈な個性を持つメンバーをまとめたのは“闘将”柱谷哲二だった
都並が復帰する北朝鮮との第2戦からは、堀池が右SBへ戻ると見られていた。ところが、オフトはUAE戦で右SBを務めた勝矢寿延をそのまま先発に据えたのである。
堀池は激高した。
「自分は本職じゃない左サイドバックをやるために来たわけじゃない。それなら呼ばないでほしい」
チームから離脱するほどの勢いでオフトに迫る堀池を、ラモスがなだめた。
「いまは我慢だよ。お前の力が必要なときが必ず来るよ」
果たして、勝矢は北朝鮮戦で2枚目の警告を受け、イランとの第3戦で出場停止となってしまう。堀池がスタメンに復帰したことでチームは落ち着きを取り戻したかに見えたが、まだまだ騒がしいのである。イラン戦当日に、ラモスが風邪による胃炎を訴えた。朝から食べものを一切口にできなかった。
「魂込めました、足に」カズの名言が生まれた日
グループステージでは3試合を終えたUAEが、1勝2分の勝点4で首位に立っていた。イランは1勝1分の勝点3だ。2試合連続ドローの日本は、勝点2の3位である。準決勝へ進出できる2位以内へ浮上するには、勝利が必要だった。
0対0で推移する68分、オフトが動く。ラモスとFW中山雅史を投入する。50分過ぎに退場者を出していたイランを押し込み、85分にカズこと三浦知良がペナルティエリア内右から豪快なシュートを突き刺す。メインスタンドまで全力疾走した背番号11は、今大会初めてサンバのステップを──カズダンスを披露した。
エースストライカーのゴールは決勝弾となり、日本はUAEと勝点で並ぶ。抽選の結果、首位で準決勝へ進出することとなった。
試合後のインタビューを受けるカズは、興奮気味に話した。そして、名言が生まれる。
「とにかく思い切り蹴った。何が何だか覚えていないけど、右足にいまも感触が残っている。魂込めました、足に」
ヒーローになったゴン中山「あれは演出です」
イラン戦から3日後の準決勝は、中国が相手だった。8月のダイナスティカップでは2対0で勝利していたが、この日は開始わずか30秒で先制ゴールを許してしまう。
それでも、後半開始直後に福田正博が同点ヘッドを決め、57分には北澤豪が豪快な右足シュートでネットを揺らす。ところがその直後、日本はアクシデントに見舞われる。
GK松永成立が競り合いで相手選手を蹴ったとして、一発退場を宣告されたのだ。VARのない時代でも、逃れようのないプレーだった。GK前川和也が急きょピッチに立つが、その前川のキャッチミスで同点とされてしまうのである。
