後年のイチロー「僕、そんなこと言いましたかね」

　メジャー移籍後のイチロー選手とは、シーズンオフに食事をする間柄になりました。あるとき「君が『日本での目標がなくなった』と言っていたと聞いて困ったよ」と伝えたら、「僕、そんなこと言いましたかね」なんて言っていたけれど。でも、それが本音だったのでしょうね。

オリックスの宮古島キャンプに参加したイチロー（2005年）　©Takashi Shimizu

　私はスポーツ選手ではありませんが、経営者として、企業を次のステージに持っていく、あるいは拡大させるということが、自分の成長にもつながると感じています。スポーツ選手も経営者も同じ人間です。ましてや、野球選手は若い時分しかできない。選手生活が短い中、次のステージへの挑戦をやめるよう無理強いしてはいけないなと思いました。

　ただ、もう目標がないと思われてしまった日本球界をそのままにはしておけません。多くの日本人選手がメジャーに挑戦しています。イチロー選手だけでなく、最近では大谷翔平選手などの活躍は日本人として誇らしい気持ちになります。

私は、日本の選手のメジャー流出には反対

　ですが、今でも私は、日本の選手のメジャー流出には反対の立場です。最終章で詳しく述べるためにここでは割愛しますが、プロ野球オーナーたちは、日本のプロ野球が一番になるための努力をもっとすべきです。

2009年2月、宮古島キャンプであいさつをする宮内オーナー（当時）　©Shigeru Tanaka

　イチロー選手のメジャー挑戦は結果的にはよかったかもしれません。ただ、1人のオーナーとして、日本プロ野球の発展を願う立場の人間としては極めて残念でした。そしてスーパースターを失ったオリックスは、その後も長く低迷しました。球団経営もなかなか改善できないまま、球史に残る合併・球界再編に突入していくことになるのです。

＜つづく＞

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