だから、山川の判断も待つことに徹した。その最中、渡辺GMが「逆転残留もあるよ」とメディアに語った言葉は、山川に対するメッセージのようにも聞こえた。

　最終的に山川がソフトバンク入りした決断については、批判されるべきものではない。渡辺GMも話しているように、山川はただ「選手の権利」を行使したにすぎないのだから。

今回の人的補償…何が違った？

　ただ、今回はもう一つ問題が残されていた。彼の代替となる人的補償が誰になるか、である。

　これまでのFA移籍に伴う補償とは異なる性質を抱えていた。ファンからの反応も含めて「トラブルがあった選手のFAによる人的補償」という点である。

　その中での「人的補償は和田」という報道だった。

　もし事実であれば――一部メディアの報道どおり「和田がプロテクトから外されて」いて、「世間の反響を鑑みて方針が変わった」ことが本当だとしたら、ソフトバンクは大失態を演じたと言える。トップが責任を取る事態にまで発展してもおかしくない。

ホークスの顔ともいえる和田毅　©BUNGEISHUNJU

　ところで、西武はなぜ、和田を指名したのだろう。西武視点から考えても、正直なところ、首を傾げた。なぜなら、西武の補強ポイントは投手陣ではあれ、先発ではなくリリーバーと見ていたからだ。

和田を欲しがった西武…なぜ？

　昨季の西武は平良海馬の先発転向によってリリーバーが手薄になっていた。田村伊知郎、豆田泰志らの台頭はあったが、最後までリリーバー層の薄さが目立った。その点、最速160キロもある甲斐野は、喉から手が出るほど欲しかった人材だ。今季のクローザーを務めることだって十分にあり得る。

　一方、和田のポジションである「先発」はどうか。ザッと名前を挙げるだけで、高橋光成、今井達也、平良海馬、隅田知一郎、松本航、與座海人……さらに6年目の渡辺勇太朗、2023年ドラフト1位の武内夏暉、先発もできるドラフト2位の上田大河がいる。枚数は十分足りている。

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