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本田真凜22歳「笑顔の引退会見」までにあった誹謗中傷、浅田真央の言葉…「(試合に)もう出たくない」葛藤を乗り越えた20年のスケート生活
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2024/01/14 17:02
1月11日、引退会見を行った本田真凜(22歳)
誹謗中傷に悩んだ時期も「自分から探しに行って…」
しかし以降も寄せられる注目が小さくなることはなかった。
Web記事のコメントやSNSには心ない言葉が寄せられることもあった。99人が応援していても1人の誹謗中傷に傷つくことは多くのアスリートが証言している。
「たくさんいいコメントがあったとしても、自分にとって傷つく言葉が1つあったら、ずっとそれが残ってしまって」
「悲しくなったり傷つくのは分かっていても、自分から探しに行っていました」
スケートそのものへの葛藤が生じることもあったが、向き合い続けた。スケートを離れることはなかった。
浅田真央にかけられた「忘れられない一言」
手を差し伸べてくれる人もいた。2021-2022シーズン、葛藤が高じたタイミングで連絡をくれたのは浅田真央だった。
1時間以上、2人で話をした。練習を何度もみてくれた。
その中で何度も浅田が語りかけた言葉を忘れない。
「私も含めて、真凜のことを応援している人はたくさんいるんだよ」
会見では、最後の試合となった昨年末の全日本選手権後に浅田から受け取ったメッセージに触れている。
「一言一句間違えずに言えるくらい自分の中では覚えているんですけど、それは自分の中の秘密にできたらいいなっていうのもあって。『最後まで小さいときから逃げずにここまで頑張ってこれたのはすごい偉いことなんだよ』『新しいスタートも胸を張って思いっきり進んでいけばいいよ』とかけていただきました」
浅田もまた、10代の早々から大きな注目を寄せられる中、重圧と向き合い、葛藤を重ねたスケーターにほかならない。そして重圧や葛藤を打ち破り、光を放ち続けた浅田の共感と称賛のこもった言葉は、本田真凜の軌跡がいかなるものであったかを示してもいる。