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箱根駅伝、衝撃の「16校繰り上げ」はなぜ起きた? 「3区だけで1~10位が“3分39秒差”」「新シューズが追い風に?」「佐藤圭汰“大逃げ”宣言の影響」
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2024/01/10 06:01
往路のスタートでは横一線。約5時間後の往路終了時にはトップの青学大と10分以上差がついた大学が16校と「二極化」が顕著なレースとなった
太田の記録はハーフマラソンに換算すると58分56秒ほど。3区は下り坂基調のコースとはいえ日本記録(1時間00分00秒)を大きく上回る“爆走”だった。
復路で16校が一斉スタートしたのは、この3区のタイム差が非常に大きい。というのも、太田に2分以上の差をつけられたのは20校、3分以上は16校、4分以上も10校あったのだ。
青学区間賞エースが着用していた超高額シューズ
前回と比べれば、その差は歴然。太田は区間10位の選手に3分39秒、同20位の選手に4分46秒もの大差をつけた。一方で、中大・中野翔太が1時間01分51秒で区間賞を獲得した前回は、区間10位の選手と45秒差、同20位の選手とは2分49秒差にとどまっていた。
太田の快走は多くの関係者にとって「想定外」だったが、足元を見ると、アディダスの“新兵器”が備わっていた。今大会、青学大の黒田と太田のみ、昨年9月のベルリンマラソンでティギスト・アセファ(エチオピア)に驚異的な女子の世界新記録(2時間11分53秒)をもたらした『アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1』を着用していたのだ。
同シューズはフルマラソン1回分の着用を目安に設計された約138g(27cm)の超軽量厚底モデル。税込8万2500円という超高額ながら、昨秋に限定抽選販売されるとすぐに完売した。現在、大手フリマサイトでは倍以上の値段で取り引きされている。
平林も新兵器を履く可能性があったが…
青学大と同じくアディダスとウエアサプライヤー契約を結んでいる國學院大にもエース平林用に同社から1足分の提供があったという。しかし、平林は慣れ親しんでいる『アディゼロ タクミ セン 9』というモデルで2区に出走した。
國學院大・前田康弘監督は、「平林は使用しませんでしたが、青学大のふたりは迷わずに新モデルを使った。高性能のシューズをうまく使いこなせた部分も(快走の要因として)あるんじゃないでしょうか。特に太田君の走りは衝撃ですよ」と驚きを隠せなかった。