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バレー界にも“大谷翔平”効果? 2023年“獲りまくった”小野寺太志が語る世界にビビらなくなった理由「自分でも出来過ぎなんじゃないかと」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byYuki Suenaga
posted2023/12/30 11:04
2023年を振り返ったバレーボール日本代表・小野寺太志(27歳)。今季から加入したサントリーサンバーズでも世界クラブ選手権3位に貢献した
誰もが初めて経験する舞台で、代表での経験豊富な小野寺が周囲に与える安心感は絶大だった。サントリーの山村宏太監督は言う。
「劣勢な時に慌てやすい選手が多いんですけど、『慌てる必要はない。自分たちのやるべきことをやるだけだよ』といった声かけもしてくれていた。世界を経験している小野寺選手がいたことは非常に大きかったと思います」
海外のミドルブロッカーは210cm近い選手が多く、日本では大型の202cmの小野寺でも上からクイックを打たれることはあるが、相手が万全の状態でない時はきっちりとブロックタッチを取ってディフェンスにつなげた。攻撃面も、ネットから離れた場所からでもセッター大宅真樹との息の合ったクイックを難なく決めた。
今季のVリーグが始まった頃、大宅は「まずサイドアウトをしっかり取ってくれるところは、安心・安全・信頼の小野寺だなと(笑)。(トスの)ストライクゾーンが広く、『この辺に上げればなんとかしてくれる』という選手なので、やっぱりレベルが違う。相手がコミットブロックで来ても1枚なら気にせず上げられる。そういう選手が真ん中にいるだけで全然違うんです」と語っていたが、世界のクラブが相手でも、その「安心・安全・信頼」は変わらなかった。
対戦相手には、東京五輪金メダリストのフランス代表イアルバン・ヌガペトや、高い得点力を誇るオランダ代表オポジットのニミル・アブデルアジズ(ともにハルクバンク・スポーツクラブ)、リオデジャネイロ五輪金メダリストのブラジル代表ルーカス・サートカンプやバラセ・デ・ソウザ(ともにサダ・クルゼイロ・バレー)など、世界的なスター選手がいたが、サントリーは誰一人名前に圧されることはなかった。
相手が世界のスター選手だろうが対等に戦えるという小野寺の自信が、周囲にも余裕をもたらした。
日本代表で積み重ねてきた“自信”
日本代表は、公式戦で30年ぶりにブラジルに勝利するなど、長年歯が立たなかった強豪にも勝利し、今年世界ランキングは4位に上昇。世界クラブ選手権でも、相手にどんなに実績のある選手がいても、もう見上げることはなくなったと小野寺は言う。
「もちろんスター選手で、実力がある選手であることに間違いはなくて、すごいなと思う部分はたくさんあるし、簡単にブロックできなかったり、まだまだ追いつかなきゃなという意識では見ていますけど、やっぱり僕らが代表で今年重ねた経験というか、勝ってきた事実というのはあるので、気持ちの面で負けていないし、引いていない。『事実オレら勝ってるし』というふうな余裕を持ちながら、相手を見ることができて、対等にというか、そういう感じで戦えていると感じていました」