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「スケートで五輪を狙える身体能力」「成績もオール5」ぴょんぴょん跳ねる“元スーパーキッズ” 150cmのキャプテンが挑む最後の春高バレー
posted2024/01/04 17:02
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Yuko Tanaka
150センチの小さな身体が、人一倍大きく見える。
「行けー!」
間もなく始まる試合に向けた公式練習。スパイクを打つアタッカーに。レシーブを受ける選手に。何より戦闘態勢に入った自分に気合を入れる。
今シーズン、夏のインターハイと秋の国体を制した下北沢成徳は、2023年11月19日の春高バレー東京都代表決定戦で共栄学園と八王子実践に勝利し、東京第1代表として2年ぶりの出場を決めた。
吹奏楽や声援が戻った会場で、試合中のコートでもずっと“声”を響かせたのが下北沢成徳の主将・リベロの内澤明未だった。
試合後は「ホッとした」と笑みを浮かべたものの、同じく激戦区・東京大会を突破した八王子実践や共栄学園が喜びを爆発させる一方で、淡々と結果を受け止めた。なぜ喜ばなかったのか――内澤に問うと、かれた声で即答した。
「本当は嬉しいんですけど、次があるので。自分たちの目標はやっぱり春高だから、ここで勝てたのはすごく嬉しいけど、一喜一憂しすぎないように、というのは心がけていました。インターハイの時も同じで、決勝で勝った瞬間は嬉しくて、喜んだけれど、まだ先があるからって」
大きな目をくりっと動かしながら、「でも」と加える。
「春高はやっぱり、すごく嬉しいです。2年分の悔しさがあるので」
目を奪われた小さなリベロ
初めて見た瞬間から目を引かれる選手に時折出会う。
苦しい場面で打ち切るエースや1本のパスで唸らせるセッター。理由はさまざまだが、内澤もまさに初めて見た瞬間から一挙手一投足が気になって仕方がない選手だった。
2年前の11月、同じく春高出場を決める東京都大会。背番号「14」をつけていた当時1年生の内澤は、今と同じく長身が揃う下北沢成徳の中ではひときわ目立つ存在だった。それでも尋常ではない運動量と速さでコートを駆け巡り、さらにチームに得点が加わると驚くほどピョンピョンと跳び上がる。両手を突き上げて喜ぶ姿とジャンプの高さに目を奪われた。