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“駅伝不毛の地”沖縄出身ランナーが箱根駅伝「優勝候補」で主力のナゼ…國學院大・上原琉翔&嘉数純平「ウチナーンチュ」コンビが秘める野望
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph byMisa Fujii
posted2024/01/01 11:04
上原琉翔(左)と嘉数純平の沖縄県出身コンビ。これまで沖縄は環境的に長距離競技が弱いとされてきたが、歴史を塗り替える活躍を見せている
2023年の上半期もトラックレースでは結果を出せずに終わってしまった。夏を経て出雲駅伝には出場できなかったものの、全日本大学駅伝でメンバー入りし、6区で大学駅伝デビュー。区間5位だった。
「やっぱり最初は不安の方が大きくて、正直ちょっと怖い部分もあったんですけど、7区、8区に平林さん、伊地知さんがいるって考えたら『自分の走りに徹しよう』と安心して走ることができました」
初めての大学駅伝デビューでまずまずの結果を残せたことは、嘉数の自信となっている。
嘉数は自分の強みを長い距離だと考えている。
「そういう意味では、箱根駅伝が一番適性があるのかなとは自分の中で思っています。今大会は復路にまわるのかなとは思っているんですが、単独走よりは集団走が得意なので、次回、3年生になった時は1区を走りたいなと思っています」
「自分たちの活躍で、沖縄で陸上をやる人が増えてほしい」
「自分たちが沖縄長距離界の歴史を塗り替えていっている」という意識があるという嘉数。自分たちが先陣を切り、沖縄の長距離界をもっと強くしていきたいと考えていると話す。
現状、沖縄の高校では2人の母校である北山高校と、コザ高校の2校に強い選手が集中しており、この2校以外が高校駅伝の代表となったのは直近の10年では1回だけ(2014年度の沖縄工業高校)だ。「陸上をやっている」と言うと「珍しいね」と言われることもまだまだ多い。
それだけに、上原も故郷での長距離競技の立ち位置への想いは強い。
「自分たちが卒業してからは、また注目が薄くなってきてしまっているので、もう1度沖縄県を背負って、全国の舞台で2人でしっかり戦っていきたいなという気持ちはありますね」
師匠である濱崎さんも「沖縄の陸上界を盛り上げたい」という気持ちでクラブチームを主催している。
「自分はその意思をしっかり引き継いでいこうかなと思ってます」
自分たちが活躍して、メディアで取り上げられ、さらに沖縄に陸上が広まってほしい――。そして、願わくは箱根駅伝のテレビ放送が沖縄でもされるようになってほしい。2人の「ウチナーンチュ」ランナーは、故郷への大きな思いを抱いて箱根路に臨む。