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“駅伝不毛の地”沖縄出身ランナーが箱根駅伝「優勝候補」で主力のナゼ…國學院大・上原琉翔&嘉数純平「ウチナーンチュ」コンビが秘める野望
text by
藤井みさMisa Fujii
photograph byMisa Fujii
posted2024/01/01 11:04
上原琉翔(左)と嘉数純平の沖縄県出身コンビ。これまで沖縄は環境的に長距離競技が弱いとされてきたが、歴史を塗り替える活躍を見せている
「だいぶ、(自分の)注目度が上がったなというのは感じました」
一方で嘉数はこの時、上原の3つ前の組で同じく5000mを走っていた。練習もできていて、いいタイムを出せる自信もあった。だが、体が動かず15分11秒02とふるわなかった。
「本当に全然だめだめで、琉翔が13分台を出して沖縄の高校記録を塗り替えたのを見ていただけでした。悔しかったです」
家も近く、いまとなっては家族よりも長い時間をともに過ごす上原のことを「兄弟みたい」という嘉数。だが、仲がいいからこそお互いを強烈に意識しあっている。仲間であり、一番のライバルだ。
得意は違えど…ライバル2人とも希望は「1区」
國學院大に進んでからも、先に結果を出したのは上原だった。
前回の箱根駅伝7区で大学駅伝デビューすると、区間6位と好走。沖縄県勢としては実に5年ぶりの箱根路だった。今季は4月に10000mで28分36秒44と自己ベストを更新すると、出雲駅伝では1区を任され区間3位、全日本大学駅伝ではエース区間の3区で区間3位。「3本柱」に負けぬ活躍ぶりを見せている。
「昨年(2022年)は上半期、故障でまったく走れずでなんとか箱根には間に合わせました。今年(2023年)は大きな故障が一つもなく、上半期からしっかりレースに出ることができました。夏合宿も最後まで行えたので自信を持って駅伝シーズンに入れたこともあって、それが力になって結果にもつながっているんだと思います」
特に出雲駅伝の1区では、前田監督も「今回のキーマンだった」と挙げる好走。上原本人も「高校時代から何回も経験してきている1区で、冷静に落ち着いた走りをできた」という。全日本では他校のエースと戦う区間で、「自分の力を試したい」という気持ちもあって臨んだ。目標とする区間賞には届かなかったが、「他大学のエース級の選手たちともしっかり戦える」という実感を得た。
長い距離への苦手意識があり、徐々に克服はしているものの、スピードを活かせる区間で走りたいという上原。「1区を走りたい気持ちがあります。100回大会1発目の区間賞を取っていきたいなと思っています」と意欲を語る。
嘉数は昨年、箱根駅伝で16人のエントリーには入ったが、出走はかなわなかった。
「箱根駅伝前の選考レースや、一番は練習面で調子が悪くなってしまったのがその時の自分の弱さかなと思います」