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“学生世界一”に輝いた女子ランナー「試合でも『見られる意識』はしています」 かつて“芸能界を諦めた”北川星瑠(22歳)に訪れた転機
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph byL)Takuya Sugiyama、R)AFLO
posted2023/12/29 11:04
ワールドユニバーシティゲームズで金メダルを獲得、松竹芸能への所属でも話題を集める大阪芸術大の北川星瑠(4年)
「試合のときも『見られる意識』はしています」
“二刀流女子大生”としての発信も欠かさない。講義や舞台稽古に練習と多忙な日々を送るが、TikTokの配信やInstagramの投稿を重ね、冒頭の肩書きとともに少しずつ知名度を広げてきた。そこには彼女なりの“戦略”があるという。
「走っているときと、私生活のときのギャップは意識していますね。ばっちりメイクしてオシャレした姿を見せながら、たまにジャージ姿の『かっこいい自分』を入れてみたり。試合のときはどうせ汗で落ちるからメイクしていないんです。ルーティーンでまつ毛だけは上げるのですが(笑)。
ただ、試合のときも『見られる意識』はしていますね。走り終えた後に声をかけてくださる方も増えたのですが、疲れていてもボロボロの自分は見せないように、笑顔でいるようにしています」
増田明美と森脇健児が見出した“二刀流”
そんな彼女が運命を手繰り寄せたのが、昨年の富士山女子駅伝だった。2区を区間トップのペースで走る北川について、「細かすぎる解説」で知られる増田明美さんが「将来芸能界を目指している二刀流の選手」と紹介。その解説が、松竹芸能所属の森脇健児氏の耳をとらえたのだ。
〈大阪芸大の北川ひかる選手はタレントを目指しているのか、、、松竹芸能へ、、、お待ちしています、即戦力だ、〉
森脇さんがSNSにこんな投稿をしたのが一つの縁となり、北川は今年の夏に松竹芸能に所属することが決まった。ふたりを直接つないだのも、大阪芸大の教授も務める増田さんだったという。
「そろそろ進路を考えなきゃと思ったときに、増田さんも芸能界でたくさん活躍されているので、『ぜひアドバイスをいただきたい』と監督から連絡先を聞いたんです。増田さんとお会いして色々と相談したら、『じゃあ私が(松竹に)つないであげるよ』と言ってくださって。そこからはトントン拍子に進んでいったんです」
4歳から思い描いていた芸能界での活躍という夢に、18年の歳月をかけて大きく近づいた。「思っていたより遠回りしましたが……」と言うが、学生屈指の実績を積んだからこそ、掴み取った未来だ。続くインタビュー2では、北川が目指す「二刀流アスリート」の将来像について聞いた。
<つづく>