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「卒業後は芸能界?長距離は本気で続ける?」大学生ランナー北川星瑠22歳が語る“ホンネの進路”…「陸上競技者に失礼だ」批判への思い
posted2023/12/29 11:05
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
L)AFLO、R)Takuya Sugiyama
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「日本で活躍できる選手、そして日本で活躍できるタレントになれるよう頑張りますので、応援よろしくお願いします!」
7月20日、松竹芸能本社で所属会見に臨んだ北川は、報道陣を前に高らかにこう宣言した。立会人を務めた森脇健児氏が「僕の40年間の記憶では所属するタレントが会見したことはない」と語るように、松竹も大きな期待を持って彼女を呼び込んだのだろう。
選手とタレントの二刀流。北川の所属発表はこの肩書きとともに広く報じられたが、その形にはグラデーションがあるだろう。森脇氏のように芸能界という枠組みの中で“走り”を武器にして生きていくのか、それとも芸能活動と並行して陸上の世界で真っ向勝負するつもりなのか――。
北川に問うと、「“ガチ”の二刀流を目指すつもりです」と語り、こう言葉を続けた。
「ユニバーシアードに出場するという目標はあったのですが、世界選手権やオリンピックというところは全く考えていなくて。でも、ユニバーシアードで金メダルを獲ったことで『もう一度ジャパンのユニフォームを着て走りたい』という思いが芽生えました。実業団ランナーとして、ワンランク上の舞台で戦いたいと思っています」
卒業後はタレント活動をしながら実業団で競技を続ける
大学卒業後はタレントとして松竹芸能に所属しながら、実業団のユニバーサルエンターテインメントで競技を続ける。真っ直ぐな目で将来を見据える北川だが、元々はそこまで競技者としての自我を強く持っていたわけではない。中学、高校と滋賀県内、関西では指折りの実力者だったが、世代トップと言うほどの存在ではなかった。本人も大学進学後は競技を辞めるつもりで、ましてや世界への意識は無いに等しかったという。
だが、そんな彼女の資質に惚れ込み、大阪芸大へと導いたのが、女子駅伝部の中瀬洋一監督。市立船橋高時代に小出義雄氏の薫陶を受け、実業団では小出氏の右腕として、高橋尚子さんや土佐礼子さんの育成に携わった名コーチでもある。2008年に同大女子駅伝部の監督に就任し、部員集めから地道に強化を進め、杜の都駅伝や富士山女子駅伝の常連校へと育て上げた。
北川が比叡山高1年生の頃、別な選手の勧誘でグラウンドを訪れた中瀬監督は、彼女の走りに目を奪われたという。
「積極性というのでしょうか、先輩がいても前を走るような姿勢を見て『僕が探していたのはこの子だった!』と思ってしまったんですよね。この子は絶対に伸びると確信して、名前をネットで調べたら、子役時代の宣材写真が出てきて。これはもう、うちの大学に来てもらうしかないと」