Number ExBACK NUMBER
“学生世界一”に輝いた女子ランナー「試合でも『見られる意識』はしています」 かつて“芸能界を諦めた”北川星瑠(22歳)に訪れた転機
posted2023/12/29 11:04
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
L)Takuya Sugiyama、R)AFLO
幼い頃から芸能の道を目指すも、一度はその夢を手放した彼女はなぜ、前例のないチャレンジを決めたのか。幼少期の芸能活動での挫折、“二刀流女子大生”としてのセルフプロデュース、そして松竹芸能入りの背景について聞いた。(NumberWebインタビュー全3回の1回目/#2、#3へ続く)
◆◆◆
〈自称日本で唯一ミュージカルを学ぶ長距離選手〉
北川のSNSのプロフィールには、こんなキャッチフレーズが書かれている。異色の肩書きを持つ彼女だが、ここまでの道のりには紆余曲折があった。
幼い頃、北川が憧れたのは日の丸を着けたランナー、ではなく、華やかな芸能の世界だった。
「あまり記憶にはないのですが、母から聞いた話によると、小さい頃から音楽番組やバラエティを見るのが好きだったそうです。テレビの世界、画面の向こう側にすごく興味があったのだと思います」
画面にかじりつく娘の姿を見た母の勧めで、芸能プロダクションのオーディションを受け、合格。幼稚園生だった4歳の頃から、バラエティ番組の子役企画や再現VTR、大阪の交通局のCM出演など、徐々に活動の場を広げていった。
「子役」以降にぶつかった芸能界の壁
「女子プロ野球のCMにも出た覚えがあります。確かひとりずつボールを投げていって、最終的に選手につながるみたいな……。あとはバラエティの特番とかで『子役たちが○○を探検!』みたいな企画に出させてもらうことも多かったですね」
ただ、その波は年齢が上がるにつれて落ち着いていく。小学校低学年の頃までは引き合いがあっても、高学年に入り、身長が伸びて大人びてくると、「子役」としての仕事は減っていった。思い描いていたようなチャンスにも恵まれず、北川の気持ちは少しずつ芸能活動から離れていった。
「最初はすぐに好きな番組に出られると思っていたけれど、やっぱりそう簡単にはいかなくて。本当はドラマで演技のお仕事がしたかったのですが、自分の実力が伴わず、オーディションを受けてもなかなか受からない。自分には芸能界で輝く才能がないのかなって思い始めました。中学に入ると勉強や部活もありますし、普通の生活に戻って、違う夢を探そうかなと思ったんです」