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「なぜ止めないんだ、の声は当たり前だと思う」全日本大学女子駅伝でチームメイトが意識朦朧…それでも大阪芸大の主将が語った「感謝の言葉」
posted2023/12/29 11:06
text by
荘司結有Yu Shoji
photograph by
L)AFLO、R)Takuya Sugiyama
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「代表に選ばれたときから金メダルを獲ることを目標にしてきました。監督にも、私が芸能界で活動するならその肩書きは絶対あったほうがいいからって言われて。『絶対に1位を獲るぞ』という気持ちでスタートラインに立っていました」
8月に中国・成都で行われたワールドユニバーシティゲームズ(ユニバ)の女子ハーフマラソン。満を持してスタートラインに立った北川は、カメラに向かってリラックスした笑顔を見せた。
「強い自分を見せてもっと注目してもらうんだ、と」
北川と中瀬洋一監督は、レースにむけて綿密なスケジュールを立てていた。レース40日前には函館ハーフマラソンに出場し、試合を想定した1キロ3分30秒ペースをクリア。続いてホクレン深川10000mで32分39秒02の自己記録、ホクレン千歳5000mで15分54秒51とそれぞれ目標タイムを超え、スタミナ、スピード持久力、スピードのすべての力を確認した。大阪芸大に通う中国人留学生から現地の気候について情報を仕入れ、あえて気温の高い時間帯にポイント練習を行うなど、暑さ対策もこなしてきたという。
7月下旬に松竹芸能所属が決まり、迎える初のレースがユニバだった。序盤から先頭集団でレースを進め、終盤はトルコ人選手との一騎打ちに。一時は遅れを取った北川だが、残り500mで逆転し、ゴールテープを切った。最後の力を振り絞れたのは「期待を裏切れない」との思いだった。
「正直、レース後半は暑さも響いて苦しい場面が続いたので『もうだめかもしれない』と思ったのですが、これまで以上に期待の声が届いていたので、それを裏切れない、強い自分を見せてもっと注目してもらうんだという気持ちで振り絞ることができました」