「おっしゃる通りで初めは物理的にはあまり通えていなくて……。昔の中大の寮は4人1部屋で1人たたみ一畳くらいのスペースに布団を敷いて寝ていたのですが、夜な夜な予備校の配信動画を見たりすることが精一杯でした。

　ただ、周りも皆、規則正しい生活をしていたので、集中できないとかはなかったですね。他の選手もまじめな人が多く、派手に外に遊びに行くこともなかったですから『自分だけが遊べない！』みたいな感じもなかったですし。勉強自体はやっぱり新鮮で楽しかったです。楽しいと思えていたレベルなので、甘かったとも言えますが……」

　周囲の環境や中大駅伝チームの自主性を重んじるスタイルは、チーム練習、自主練習、大学の授業、司法試験の勉強と、自ら時間割を作って学生生活を送らねばならない梁瀬さんにとっても、大きな助けになったのだろう。

　チームの練習は週6だったが、午後練習は早めの時間と遅めの時間の2回にわかれており、授業との兼ね合いをみてどちらかに参加すればいいというフレキシブルさもあった。

「寮のそばには川沿いのランニングコースがありましたし、大学キャンパス内の競技場にもバスで約10分とアクセスがよかった。生活のペースがつかめてきた3年時にはキャンパスでの練習のときは、終わったら着替えて自習室に行き、学食で食事を済ませて帰るみたいな感じでしたね」

1年生で1区、2年時には5区山上りにも抜擢

　箱根駅伝は1年時に1区（区間17位）でデビューすると、2年時にはレース前にメンバー変更があったなかで5区山上りに抜擢され（同14位）、3年時には4区（同23位）と3年連続で往路の主要区間を任された。

箱根駅伝は1年時の1区でデビューし、3年生まで3つの区間を走った　©︎JIJI PRESS

　3年時の全日本大学駅伝では3区で区間賞を獲得するなど、学生三大駅伝（出雲駅伝、全日本、箱根）にもすべて出場した。3度の箱根駅伝に出場したことは、どんな記憶として刻まれているのか。

「反省しかありません。トラウマというか、いまだに『明日、箱根を走れ』と言われる悪夢を定期的に見るほどです（笑）。最初に走った年が1区だったので、スタート・ゴール地点の大手町の読売新聞社前に大勢の関係者が集まっているところを見て、箱根駅伝の荘厳さ、影響力の大きさなどは理解したつもりでいたのですが、箱根という舞台に対する思いは他の選手と比べて足りていなかったと思います」

【次ページ】　3年時は4区も直前の体調不良で区間最下位に…