「うーん……。是が非でも戻りたいとは思いませんね。まずは真剣勝負できるのが第一ですかね」

　上手くは言えないが、三上らしい答えで納得した。もちろん再びNPBで投げる姿を見てみたいが、とにかく心ゆくままに、腕を振ってもらいたい。

「ベイスターズ時代もジャイアンツ時代も新潟に遠征しているんですが、飯も美味いし、空気も美味い。NPBでやりあった選手たちも集まりますし、そういうのってなんか楽しいじゃないですか。また友だちが増えますよ」

青とオレンジ

　不思議なもので、三上のこれまでの野球人生は“青”と“オレンジ”に縁がある。

「そうなんですよ。高校（県立岐阜商）のユニフォームは当時紺でしたし、法政はオレンジ、ENEOSもオレンジ、ベイスターズは青、ジャイアンツはオレンジ、そしてアルビレックスは青とオレンジ。珍しいですよねえ」

　ネットで“色言葉”と検索すると、青は「冷静」「知性」「未来」、オレンジは「幸福」「誇り」「野心」と出る。どこか三上の性格に合っているな、と思わずにはいられなかった。

「野球を続けてきたからこそ、たくさんの人に出会えたし、いろいろな経験もできました。今回も投げ続けたから新潟にも行けるし、新しい人、環境に触れることができる。純粋に楽しみだし、刺激を受けたいと思います。そしていつかプレーを終えた時、野球に受けた恩恵を返していきたい。どういう形になるかわからないけど、いろんな人を応援したいなって思っているんです。僕に付き合ってくれていた家族をどんどん応援したいし、そして僕を応援してくれた人に、恩返しをしたい」

　だが、三上に「ゲームセット」のコールはまだ掛からない。

「投げ続けたいですよね。健康で。うん、真剣勝負をずっとできるように」

　吹き荒れる海からの強風の中、三上は静かに、そして噛みしめるようにそうつぶやいた。

＜【DeNA退団編】とあわせてお読みください＞

#1から読む

「一軍ではもう難しいのかな」DeNA三上朋也33歳が限界を悟った一球…その秋、通算114ホールドの生え抜き右腕は横浜を去った