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「明日が確約されているわけじゃない」カープ待望の大砲候補・末包昇大27歳が3年目に賭ける覚悟
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/01/01 17:00
昨年9月23日の巨人戦で2打席連続本塁打を放って勝利に貢献し、笑顔で撮影に応じる末包
先輩の堂林翔太に頼み込み、カブス鈴木と合同トレにこぎ着けた。自身の広島入りの遠因となり、プロ入りへの道を切り開いたフォームの原型にもなったスラッガー。直接会ったことがなくても、1年目の春季キャンプ中にチームメートの携帯電話を介して打撃指導を仰いだこともあった。
「僕には時間がない。26(歳となるシーズン)でプロに入ったので。早めに結果を出さないと生き残れない。僕には時間がないので取り込めるものは取り込んで、悔いなく終わりたい」
プロ入り間もない選手なら躊躇してしまうようなことにも、末包は迷わずに飛び込む。鈴木に対してだけでなく、1年目にチームメートだった長野久義(巨人)にも助言を求め、バットを同じ型のものに変えた。
誰かに助けを求めるだけでなく、まず自ら変わろうと取り組む姿勢があるからこそ、周りが手を差し伸べる。
勝負の年に新たにする覚悟
23年は開幕二軍スタートとなったが、新井良太二軍打撃コーチが鈴木流を自己流に落とし込むまで寄り添ってくれた。一軍に定着しても試合後には毎日のように打ち込みを行い、球場を出るのはいつも最後。ホームランを打った日でも変わらなかった。
「切り替えも大事なので、一軍の選手は『明日頑張ろう』となる。でも、それは明日があるから。1年目は僕も同じようにしてしまっていた。でも、僕は明日が確約されているわけじゃない。なんとか明日も残れるように、と」
東洋大では控え選手でプロ入りも遅かった。大きな夢を抱いてプロ入りしても、末包には隠しきれない焦燥感があった。1年目に抱いた危機感は二桁本塁打を放った2年目も薄れたわけじゃない。
「僕は3年以内に目立った数字を残さないと終わりが近づく。23年以上の成績を残せれば、もう少しできるかもしれないけど、逆に24年もダメだったら……と覚悟しています」
1月には新井監督も行った護摩行に臨むことを決意した。何かにすがりたいわけでも、助けを求めているわけでもない。生き残りが厳しいプロ野球界。選手なら誰もが抱く危機感をただ敏感に強く感じているだけ。そんな自分を支えるものが欲しいのだ。
泥臭いスタイルは、今の時代には合わないかもしれない。ただ、新井監督も鈴木もバットを振って振り込んで、スラッガーとして開花した。待望の大砲候補として可能性を感じさせる末包が、その系譜となることを期待したい。