炎の一筆入魂BACK NUMBER
「明日が確約されているわけじゃない」カープ待望の大砲候補・末包昇大27歳が3年目に賭ける覚悟
posted2024/01/01 17:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
新しい1年の幕開けに、新たな大砲出現の夢を見る。2023年は新井貴浩監督の下、5年ぶりAクラスとなる2位と大躍進した広島だが、今年も大砲不在が悩みの種。21年に38本塁打した鈴木誠也が米大リーグ・カブスへ移籍してから、22年はライアン・マクブルームが17本、23年はマット・デビッドソンが19本と、本塁打は外国人頼みとなっている。今年は外国人野手が総入れ替えとなり、打率、安打、打点でチームトップだった西川龍馬もFAで移籍した。
得点力低下が懸念されるものの、溝が深ければ深いほど差す光は輝いて見えるものだ。23年に広島の中でOPSトップだったのは、西川でもデビッドソンでもなく、末包昇大だった。規定打席未到達ながら、OPSは.862。特に長打率はチームでただ1人、5割超えの.554をマークした。
鈴木の米大リーグ挑戦が決まった21年オフ、広島は右のスラッガーを求め、同年のドラフト6位で指名したのが、当時すでに25歳、大阪ガスの末包だった。
華々しいデビューからの失速
デビューは華々しかった。1年目の開幕戦から猛打賞を記録すると、8戦目にはプロ初ホームランを放ち、5月8日のDeNA戦では満塁ホームラン。唯一無二の主砲を失ったばかりのファンは新たな大砲の片鱗に夢を抱いた。だが一方で、打ち取られ方がパターン化しており、それを憂慮した首脳陣の起用が特定のケースに偏った。末包の出場機会は減り、打率3割超を記録しながら二軍降格となった。
結果で見返したいところだったが二軍で目立った結果を残せず、8月に再昇格するも評価を覆すことはできなかった。31試合、打率.299、2本塁打、14打点、OPS.742の成績で、末包は26歳の1年目シーズンを終えた。
ルーキーたちが緊張感から解き放たれる1年目のオフも、末包にとっては大きな危機感に押しつぶされそうな時間だった。
「初めてのオフといっても、焦りしかなかった。どうしたらいいのかと。(一軍で)数字が残っていたから、落ちても打てば上がれたと思う。でも結果、(首脳陣の)見立て通りになってしまった」