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「昌磨くんがいたお陰で…」鍵山優真20歳が優勝後に語った宇野昌磨とコストナー・コーチへの感謝「五輪に向かってカロリーナさんと一緒に」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAsami Enomoto
posted2023/12/02 17:00
NHK杯で優勝し初のGPファイナル進出を決めた鍵山優真(20歳)
演技後半のトリプルアクセルで珍しく転倒するシーンはあったものの、集中力は切れない。最大の見せ場であるステップシークエンスに、今の自分のすべてを込めた。
「テーマである雨の情景をイメージしながら、指先まで細かく動かしたり、目線の動かし方1つ1つを細かく意識しました。カロリーナさんに習うようになくなって、ジャンプだけでなく、表現を意識するようになってから、本番で『不安』という要素が一切なくってきたのも良かったと思います」
得点はフリー182.88点で2位。総合点が表示されるまでの数秒間、緊張の表情で画面を見つめる。総合288.39点で、1.84点差での優勝が決まると、ホッとした笑顔を見せた。
「昌磨くんがいたお陰で、気持ちが盛り上がりました。僕にとって一番のモチベーションは、やっぱりライバルの存在。昌磨くんに早く追いつきたいと思える試合になりました。この先もこの気持ちを忘れないで、高め合っていきたいです」
「五輪に向かって、カロリーナさんと一緒に」
そして初進出が決まったGPファイナルへと目を向ける。
「ファイナルの舞台に初めて立つので、本番になったらどういう思いになるのか、まだ分かりません。ただ、GPフランス杯では、(イリア・)マリニン選手、アダム(・シャオ・ヒム・ファ)選手、そしてここで昌磨くんと滑れることがモチベーションになりました。ファイナルではこの3人と滑っても僕の表現力が負けないように、練習を積み重ねていきたいです」
鍵山の優勝を受けて、コストナーは言う。
「まずは鍵山(正和)先生に感謝です。先生がいるから、私はスケーティングや演技のことだけに集中して目を光らせ、優真を導くことができるんです。そして優真は自分が取り組みたいことをしっかり理解している。それが結果に繋がりました。演技後、優真からはもう、さらに感情を演技に投影するためのアイデアを聞かれました。自分の個性をスケーティングに反映させることで、彼は次のステップに進み始めていると思います」
コストナーが愛くるしい笑みで『オツカレサマ』と鍵山に声をかける。鍵山は照れたような笑顔を見せた。
「今の自分には、まだまだ表現力やスケーティングが足りません。ミラノ・コルティナ五輪に向かって、カロリーナさんと一緒にしっかり強化していきたいです」
単にパーフェクトの演技を目指すのではない。素晴らしい演技とは何か、自分の個性とは何か、芸術とは何か。20歳の鍵山は、フィギュアスケートの深淵を探求していく。