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「“結婚するから引退”ではない」元バレー代表・石井優希が“失意の東京五輪”を終えた後も現役を続けた理由〈ホヤホヤ新婚生活も明かす〉 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT

posted2023/11/26 11:02

「“結婚するから引退”ではない」元バレー代表・石井優希が“失意の東京五輪”を終えた後も現役を続けた理由〈ホヤホヤ新婚生活も明かす〉<Number Web> photograph by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

昨季限りで13年間の現役生活にピリオドを打った石井優希(32歳)。8月には結婚を発表した

 五輪後は岡山の実家に帰り1カ月ほど休養した。

「ほぼ家からは出ませんでした。本当に体を休めて、気持ちも、とりあえずバレーのことは忘れてゆっくりしていました。そうすると、徐々に『もう一回、楽しくバレーやりたいな』という気持ちになっていきました」

 引退についても考えた。

「その時点で『もういいかな』と思ったりもしたんですけど、でも、久光でもそれまでの2シーズン(7位、8位と)結果を残せていなくて、代表でも終わり方がよくなかったので、それで引退というのは自分の中でなんか違うなと。(その時点では)『バレー、楽しかったー』という引退ではなかったから、もう一回、結果は気にせず、楽しくバレーをして終えたいなと思って、久光とまた契約させてもらいました。

 それからは、『自分が引っ張ろう』という感じじゃなく、『頼られた時に頑張ろう』というぐらいのスタンスでやっていたら、すごく楽しくて。もう一度久光で優勝したいなと思っていましたけど、そのシーズンに皇后杯とリーグで優勝できるとは正直思っていなかったので、すごく嬉しかった。特に皇后杯は嬉しかったですね。あのシーズンのチームは勝負どころや後半に強かった印象があります。波はあっても、ここは勝たないと、というところで勝つことができた。なんか、根拠のない自信がありましたね(笑)」

13年間の現役生活に幕「やりきった気持ち」

 石井はそう言うが、“根拠”の一端は石井にあったように見えた。若手が台頭し始めた久光の中で、劣勢の場面や勝負どころでは経験豊富な石井が存在感を発揮。東京五輪後の2シーズンは、若手に移行しながらも、最終的には石井が主力に落ち着きチームを支えた。

 そして2022-23シーズンのVリーグを最後に、現役を引退。今年6月に行われた引退会見では、「本当にやりきった気持ちがすごく大きくて、今は晴れやかな気持ちです」と清々しい表情だった。

 会見に同席した久光の萱嶋章代表が「人懐こい笑顔や、人柄のいいところが彼女の良さ」と語っていたように、取材する側にとっても、どんな時も正直に、分け隔てなく人と接する石井にはいつも頭が下がる思いだった。その人柄のよさゆえに、怒られ役になったり、周囲に気を遣い、いろいろなものを真正面から受け止め悩んだことも多かったかもしれないが、最後に「すごく楽しかった」「やりきった」という言葉を聞けて、こちらもなんだか嬉しくなった。

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