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金足農エースは吉田輝星の弟「伸びしろしかない1年生」「性格そっくり」今秋“23年ぶり”秋田で優勝「あいつが投げてっと、不思議と勝つ」
posted2023/11/25 11:02
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kei Nakamura
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地元で吉田大輝は、小・中学時代から注目を集めていた逸材だった。
金足農業エリアの人たちの金農に対する思い入れはひとかたならぬものがある。そのため一家全員が金農出身というケースも珍しくない。父・正樹が金農、兄も金農となれば、大輝が金農に行くのはもはや宿命だった。
「お兄ちゃんが大好き」吉田大輝の実力
高橋佑輔(2018年甲子園準優勝メンバー)は大輝のことをこう評する。
「性格は兄貴(輝星)にそっくり。勝気で、生意気。兄貴ほど感情の起伏は激しくないですけど、人の言うこと聞かないですもん。打撃フォームもそっくり。使ってるバットまで同じです」
父親の正樹いわく大輝は小さい頃から「お兄ちゃんが大好き」で、ことあるたびに兄の動画を観返していたのだという。
兄の輝星は早生まれだったせいもあり、金農入学時、身長は170センチに届いていなかった。一方、大輝は入学したとき177センチもあった。球速も中学時代、輝星は120キロ台どまりだったが、大輝はすでに130キロ台をマーク。それだけに関係者の期待は大きかった。
とかく後輩に手厳しい高橋も大輝の投手としての実力は認めざるを得ないようだ。
「1年生の時点で比べると、投球フォームは兄貴より粗い。それでも同じくらい威力のあるボールを投げている。あと、コントロールがいいんですよ。変化球でストライクが取れる。伸びしろしかないっすよ」
今秋、なぜ秋田県大会を優勝できたか?
この秋、大輝は1年生ながらも、兄と同じ背番号「1」を託された。
「プレッシャーとかもありますけど、もらったときは、自分が絶対にチームを勝たせるんだという気持ちになりました」
金農はその大輝と、2年生投手・花田晴空の2人でマウンドを守り続けた。起用パターンは2つだ。花田が先発したら、大輝は救援に回る。大輝が先発したら、大輝が最後まで行く。
監督の中泉一豊は秋田大会5試合の戦いをこう振り返った。