熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
《交際0日で結婚》「私を支えてくれた夫は大偉業だと」ブラジル柔道コーチ藤井裕子さん41歳と夫の美しい信頼「育児に関われて幸福でした」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/11/25 17:02
2019年、世界柔道での藤井裕子さん
「実は、以前から継続的にカナダ代表からオファーを受けていました。『長期間、腰を据えて指導してほしい』という魅力的な内容だったのですが、夫とも相談した結果、『この仕事を引き受けると、一家で日本へ帰る時期を逸する』と考えてお断りしました。
――2013年、ブラジルへ渡る直前に結婚し、以後、ブラジル生まれの3人の子供の育児、そして家事の大半を担ってくれている陽樹さんについて、どう思っていますか?
「日本では、男性は社会へ出て仕事をして、それによって評価を得ることが多いですね。しかし、このような形で私を支えてくれたことは本当に大変なこと、大偉業だと考えています。いくら感謝してもしきれません」
◇ ◇ ◇
日本で生まれた柔道が世界中に伝わり、非常に多くの愛好者と競技者がいる。それは、長年、裕子さんのような指導者が世界各国で普及に尽力してきたからだろう。しかも、技術的な指導に留まらず、柔道の哲学や精神性も伝え、それを外国人がしっかりと受け止めてくれているのが素晴らしい。
しかし、裕子さんはこれまで一人で頑張ってきたわけではない。愛する3人の子供がおり、彼らの育児、家事などの大部分を担ってきた夫・陽樹さんの献身があった。
そこで、陰で藤井家の根幹を支えてきた陽樹さんに話を聞いた。裕子さん本人が語るように、彼女のブラジルでの長年の柔道指導者としての活躍は、陽樹さんのサポート抜きでは語れないからだ。
“交際0日でプロポーズ”夫は「育児ができて幸福でした」
――2013年5月に日本で裕子さんと結婚し、教員としてのキャリアを中断してブラジルへ渡ってから10年半。2014年に長男・清竹君が、2017年に長女・麻椰ちゃんが、2022年に次女・巴菜ちゃんが誕生し、3人の育児と家事の大部分を担ってきました。
「2012年のロンドン五輪を控え、英国柔道女子代表のコーチを務めていた裕子と旅先のロンドンで知り合いました。全く交際していなかったのですが、2011年の東日本大震災で『人生では何が起こるかわからない。やりたいことをやるべきだし、好きな人と結婚するべきだ』と考え、彼女が日本へ一時帰国した際に会って(交際0日で)無謀にもプロポーズしました。