フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「ISUは奨励していないのでしょう」 独占取材でマリニンが明かした「4アクセルはやらない」宣言の真意…4アクセルの基礎点は低すぎる?
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/11/10 17:03
GPフランス杯では2位となったマリニン。独占インタビューに応じた
今季GPシリーズで4アクセルを“封印”した理由
2022年9月、レイクプラシッドで開催されたUSインターナショナル・クラシックで4アクセルを成功させ、世界で初めて大会でこのジャンプをクリーンに降りた選手としてギネスに登録された。その後スケートアメリカ、GPファイナルなどでもきれいにきめてきた。だが今季はGP初戦のスケートアメリカから、4アクセルはやらないと宣言してきた。その理由はなぜなのか。
「4アクセルはリスクがとても大きくて、その割には基礎点がそこまで高くないため、この試合で入れるつもりはありません」とSP後の会見で語った。
「ISUが4アクセルの基礎点を下げた時、選手たちに大きなリスクをとってまでやって欲しくないということなのだろうと受け止めました。確かに体には大きな負担をかけますが、健康で準備ができていれば可能です。でも残念ですが、ISUは奨励していないということなのでしょう」
15ポイントだった4アクセルの基礎点が、現在の12.5ポイントに下げられたのは、最近のことではなく5年前の2018/2019年シーズンからだ。下げられたのはアクセルだけではなく全種の4回転ジャンプで、演技構成点と技術点のバランスを取るためと言われている。昨シーズン、出場したほとんどの試合で4アクセルに挑んだマリニンが、今季は気持ちを変えた理由はなぜなのか。
「昨シーズンは、名前を刻むために記録に挑戦する気持ちで4アクセルに挑みました。高い質で成功させたら、その価値をもっと高く評価してもらえるかと思っていたんです。でもやってみた結果、そこまでポイントにつながらなかった。失敗すると、クリーンな3アクセルよりも低いポイントになってしまうということを実感して、今季は控えていました」
4アクセルの基礎点は低すぎるのか? マリニンの意見
実際のところ、昨シーズンのGPエスポー大会ではマリニンは4アクセルの着氷で片手をついて減点を受け、このジャンプで獲得したポイントは8.75だった。同じ大会で2位だった佐藤駿がきれいにきめた3アクセルは、9.26を得ている。
3ルッツと3アクセルの基礎点の差は2.1ポイントもあるのに、4ルッツと4アクセルの基礎点の点差が1ポイントしかないのは理屈に合わないという声は、関係者の間からも少なくない。現在のところ、世界で彼のみがクリーンに成功させた超高難度の技なのである。
「このスポーツをプッシュして進化させ、他の選手にもインスピレーションを与えることができれば良いなと思っていたのですが、ジャッジの評価をもらえなければリスクをおかす価値はありません」