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「スケートをやめちゃいそうな感じがあった」天才少女と呼ばれたスケーターの告白…1年休養から復帰の樋口新葉「納得して終われたらいい」
posted2023/11/15 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Akiko Tamura
GPシリーズ第3戦目アンジェで開催されたフランス杯に、樋口新葉が2年ぶりに出場した。会場内には日の丸だけではなく、Welcome back Wakabaと書いてある応援バナーもあり、西洋人の若い女性が日本語で「ガンバー!」と叫ぶ声も聞こえてきた。
「フランスの大会はいつも温かい声援が多いのですごく楽しんで滑れましたし、ミスもあったんですけど、それ以外は思い切り滑れたと思います」
SP後にそう語った樋口の表情は明るかった。
彼女がフランス杯に戻ってきたのは、3位に入賞した2021年グルノーブル大会以来のことだ。そのシーズン念願だった北京オリンピックの代表の座を勝ち取り、個人戦ではSP、フリーとも3アクセルを成功させて総合5位に入賞した。
だがその1カ月後のモンペリエ世界選手権では不調で11位に終わる。帰国後、右脚の疲労骨折と診断された。昨シーズンは9月にロンバルディア杯で9位になった後、残りのシーズンを休養することが発表された。
「一番の理由は怪我だったんですけど、(オフの間に)アイスショーとかたくさん呼んでもらって嬉しかったんですけど、切り替えができないまま次のシーズンに入ってしまうというのがよくなかったので、それは心の疲れかなと思いました」
「このままだとやめちゃいそうな感じがあった」
中学2年で全日本選手権で3位に入り、天才少女と注目された。以降世界ジュニア選手権でも2度メダルを手にし、シニアでもトップレベルで闘い続けてきた。代表を逃して悔し泣きをした2018年平昌オリンピックの1カ月後、ミラノ世界選手権で銀メダルを獲得。4年先の北京に目標を定めて、3アクセルも習得した。
だがそのつけは、疲労骨折という形で身体に来た。