猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス・宇田川優希が明かす「涙の降板」の“その後”…ゴンザレスのハグ「お前のせいじゃない、俺のせいだから」「由伸との絆」〈日本シリーズ秘話〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/08 11:02
第5戦で登板し、阪神に逆転を許し涙する宇田川(中央)。ベンチに戻るとチームメートが次々に温かい声をかけた
「俺のせいだから」安達の言葉に…
マウンドに集まった野手陣に、「すみません。すみません」とひたすら謝った。
一番にマウンドに駆け寄った安達は宇田川の背中をさすりながら、「お前のせいじゃない。俺のせいだから。お前は気にすんな。まだ終わってないから。次やり返そう」と声をかけ続けた。
宗佑磨も、宇田川の胸をドンドンと叩きながら、「大丈夫だから。次もう一回やり返すチャンスもあるから、切り替えろ」と励ました。
石川亮や杉本裕太郎、T-岡田、頓宮裕真、山﨑颯らがベンチ前まで出て降板した宇田川を迎えた。決して打たれた投手を1人にはしない。
試合終了後は、ベンチで立ち尽くす宇田川を、マーウィン・ゴンザレスが黙って抱きしめた。
「本当に、チームの温かさを感じました」と宇田川は感謝する。
翌日の休養日には、レアンドロ・セデーニョがSNSのDMにメッセージをくれた。
「英語だったんですぐにわからなかったんですけど(苦笑)、調べたら、『大丈夫! 君はすごいピッチャーだから』っていう意味でした。本当にみんなに支えられているなと思いましたね」
心に火をつけたエースの熱投
それでも思い返すたび、「あの時、(捕手の要求通りに)あそこにちゃんと投げていたら」と落ち込んだが、第6戦の山本の熱投を見て、やり返したいという思いがたぎった。最後の第7戦に向け、こう語った。
「自分のせいでこの日本シリーズ負けてもおかしくない、このまま負けてしまったらどうしようと思っていたので、今日、由伸がああいうピッチングをして、みんなも打ってくれて勝てて、助けられました。
(第5戦で森下には)コントロールミスがありましたけど、あのコースをスリーベースにされるってことはやっぱり、相手が上だったんだなと、言い訳が見つからなかった。自分の負け。だから逆に、やり返してやろうって思います」