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オリックス・宇田川優希が明かす「涙の降板」の“その後”…ゴンザレスのハグ「お前のせいじゃない、俺のせいだから」「由伸との絆」〈日本シリーズ秘話〉
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/08 11:02
第5戦で登板し、阪神に逆転を許し涙する宇田川(中央)。ベンチに戻るとチームメートが次々に温かい声をかけた
3勝3敗で迎えた第7戦、そのチャンスがやってきた。0-6と大きくリードされた状況ではあったが、7回表、4番手として宇田川がマウンドに送り出された。この回の先頭は、第5戦で逆転打を打たれた森下だ。
「この間はまっすぐを打たれたので、やっぱりまっすぐで勝負したいという気持ちはありました」
ただ相手もストレートを狙っているのはわかっている。そこで、クイックも使ってタイミングを変え、3球目のストレートでショートゴロに打ち取った。次の大山はセンターフライ、シェルドン・ノイジーもレフトフライで三者凡退に。しっかりと雪辱を果たした。
8回は山﨑颯が引き継ぎ、無失点に封じた。
試合には1-7で敗れ、日本一連覇は果たせなかった。すべてを終えて、宇田川は吹っ切れた表情で言った。
「この日本シリーズ、阪神も強かったんですけど、『第5戦であそこを抑えていたら優勝できたのかな』という思いはあります。たぶん来年以降も、僕の頭の中からそれは消えないと思う。でも今日は、来年につながるピッチングができたのかなというのはあります」
由伸が抜けても…「同学年の絆」
「今年は、監督がシーズン中、すごく我慢して使ってくれたと思う。来年は、我慢して使われる投手ではなく、『宇田川なら大丈夫だろう』と本当に信頼されて、堂々とマウンドに上がれるピッチャーにならないと。平野(佳寿)さんが打たれたらしょうがない、阿部(翔太)さんが打たれたらしょうがない、というのがあるように、僕も周りからそう思われるように。練習から見られていると思うので、しっかりやっていきたいと思います」
日本シリーズ終了直後、球団から、山本のポスティング移籍を承認することが発表された。入団以来、刺激を受け続けてきた同い年のエースが旅立つ。
「同学年なので、メジャーに行ったら寂しいですけど、最後にいいピッチングを見せてもらえて、本当に頑張ろうって思えました。あっちで由伸も頑張ってくれると思うんで、由伸が抜けても同学年(山﨑颯、小木田敦也)で頑張っていきます」
挫折も屈辱も乗り越えた剛腕は、来年さらに、手をつけられない絶対的な存在になりそうだ。