オリックス・宇田川優希が明かす「涙の降板」の“その後”…ゴンザレスのハグ「お前のせいじゃない、俺のせいだから」「由伸との絆」〈日本シリーズ秘話〉

　日本シリーズ第6戦、回を追うごとに凄みを増し、絶叫しながら阪神打線をねじ伏せるエース山本由伸の姿に、同い年の2人は心を震わせていた。

「あんなの見せられたらもう、俺らもやるしかないな」

　第5戦の8回にリリーフ登板し、逆転を許していた宇田川優希と山﨑颯一郎はそう言葉を交わした。

第6戦で9回138球を投げ切った山本由伸　©Hideki Sugiyama

すべての写真を見る（61枚）

　エースのやり返す姿に勇気をもらったと宇田川は言う。

「前回（日本シリーズ第1戦で）やられて、その前のCSでも（ロッテに）やられていたので、由伸レベルでは珍しいなという感じだった。今日も先制点を取られて、たぶん序盤は自分のリズムで投げられていなかったと思うんですけど、その中で必死にランナーを帰さないようにして、だんだんギアを上げていった。100球を越えても球も速いし、本当に気持ちが伝わってきて、すごく感動しました」

「怖かった」…今季苦しんだ宇田川

　その2日前に行われた第5戦は、先発した田嶋大樹が7回4安打無失点の圧巻の投球で、2－0とリードして8回の山﨑颯につないだ。

　だが先頭・木浪聖也の打ち取った当たりをセカンド安達了一が珍しく送球ミス。いきなりランナーを二塁に背負った。糸原健斗、近本光司の連打で1点を返され、中野拓夢の送りバント成功で1死二、三塁となった場面。ここで中嶋聡監督は宇田川の投入を決断した。

【次ページ】　「申し訳なくて…」こぼれた涙