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日本勢期待の星Moto3の古里太陽が初表彰台獲得 才能の源たる身体能力の高さは子どもの頃の器械体操経験の賜物
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2023/11/07 11:04
Moto3で初めての2位表彰台を喜ぶ古里太陽とチームアジアのスタッフたち。青山博一監督も会心の笑顔だ
デビューしたころから太陽が目標とするライダーは、コーナーリングスピードの速さが特徴的だった世界チャンピオンのホルヘ・ロレンソだが、今回の太陽の走りはブレーキングからクリップまでの速さも際立ち、身体能力がズバ抜けて高いマルク・マルケスのような切れを感じさせるものだった。太陽も子どものころから器械体操をやっており、身体能力の高さは抜群である。
「うれしかったのはチームがすごく喜んでくれたこと。チェッカーを受けたときにスタッフがみんなフェンスから乗り出してガッツポーズしてくれたので、つい自分もガッツポーズが出た。アジアタレントカップやルーキーズでも表彰台はうれしかったけど、表彰台に立っても(メカニックの)太田雄さんしかいなかった。グランプリでは喜んでくれる人が圧倒的に多いので喜びも大きかった。タイでは20歳にならないとシャンパンファイトできないけど、そういえばシャンパンファイトなかったなって感じだった。アロンソもコーリンもそれは同じだったと思うけど……」
黄金世代の一角として
タイGPで表彰台で優勝したアロンソは17歳、2位の太陽と3位のベイヤーは18歳で、2021年のルーキーズカップで一緒に戦ったライバルだった。チャンピオンになったアロンソを筆頭に、今季3勝を挙げているダニエル・オルガド、2勝のイワン・オルトラ、1勝のディオゴ・モレイラらは、太陽とともに黄金世代と呼ばれている。数年後のMoto2クラス、そしてMotoGPは、このメンバーが上がってくると言われているが、唯一ホンダで戦っているのが太陽だ。
今季の太陽の走りはさらなる成長を強く感じさせるもので、シーズン後半戦に入ったころにはKTMの数チームからオファーを受けている。来季もチームアジアでMoto3を戦うことが発表されている太陽だが、リザルト以上に評価の高い選手だということの証明である。シーズンは残り3戦。マレーシア、カタール、バレンシアと続く3連戦で、太陽がどんなレースを見せてくれるのか楽しみで仕方がない。
7月12日生まれ。18歳の太陽がつけるゼッケンは誕生日から取った「72」。「チャンピオンを取ったら、7と2の間に1を入れたい」と語る。その日が、そう遠くないことを感じさせるレースだった。