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「四球の年俸査定ポイントを上げてくれ」阪神・岡田彰布監督は開幕前にフロントに直談判…急増四球が“あの球界のエース”の撃破を生んだ
text by
掛布雅之Masayuki Kakefu
photograph byNanae Suzuki
posted2023/11/04 11:01
「四球1個=ヒット1本」という思考が強いという岡田彰布監督。阪神躍進の理由は急増した四球にアリ…?
四球が急増した理由は査定アップにあり!?
四球が急増した理由のひとつは、6月2日に公開されたABCテレビ(朝日放送)の公式YouTube番組『虎バン』で、私と岡田監督との対談の中で明かされている。
私が四球の増えた理由を聞いたら、岡田監督は「これまでボール球を振っての凡打が多かったんでね」と発言した上で、「開幕の前の日に球団に言うたんですよ。フォアボールの(査定)ポイントをちょっと上げてくれと。了解を得てね。前日のミーティングで選手に(四球の査定ポイントが上がったことを)言うたんですよ」と教えてくれた。
プロ野球選手の年俸は、一試合、一試合の「走攻守」のすべてをポイント化して査定し、その合計ポイント数をもとに来季の年俸が決まる。項目によってポイントの基本数が違い、シングルヒットよりも二塁打、三塁打、本塁打のほうが高い。タイムリーヒットとなると、打点のポイントが加算されることになる。
四球にも基本のポイント数が設定されているわけだが、その四球の査定ポイント評価をアップすることを岡田監督が球団に掛け合って、フロントの了承を取り付け、開幕戦の前日のミーティングで選手に伝えたというのだ。
プロ野球選手は個人事業主だから、ただ「ボールを振るな、四球を選べ」と指示するよりも、それが給料に跳ね返ってくるとなると説得力が違ってくる。もちろん、選手たちは査定アップを意識してプレーしているわけではないが、モチベーションアップにつながることは確かだ。また結果的に四球を選ぶことによって、チームの得点や相手に与える影響は大きい。
打撃の神様と呼ばれた川上哲治さんは、「ヒット1本打って、フォアボール1個、選んだら(打率は上がり)首位打者だ」とよく言っていた。ボール球を見極めることは、バッティングの成績を大きく左右するため、打者の調子にも影響を与える。打者はボール球を振ってしまって崩れていく場合が多いため、四球の影響は計り知れないのだ。
<「岡田采配の秘密」編に続く>