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《阪神ドラフト1位》青学大174cmの“小さなエース”下村海翔が持つ驚異のポテンシャル…日米大学野球では「東都7人衆」で最も活躍&MVPのナゼ
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2023/10/26 17:27
174cmと投手としては小柄ながら、日米大学野球では他のドラフト候補を抑えてMVPに輝いた青学大の下村海翔
甲子園出場こそならなかったが、2年春に九州大会を制すと、球速もMAX149キロにまで成長。複数の強豪大学から誘われる存在になったが、安藤寧則監督の熱意にも惹かれ青山学院大へ進学。1年秋から登板を果たし1部リーグ復帰に貢献した。
しかし、その後は右肘の故障と手術で2年時の公式戦登板は無し。「(手術をしなくても)投げられるんじゃないか……」という逡巡に苛まれた時期があったことは正直に吐露するが、それでも強い芯が折れることは無かった。
「後悔は全然、していないんです。逆にその期間があったから今があるくらいに思っています。シーズン中だったら普通はハードなウエイトトレーニングができない。でも自分の場合は1年間シーズンオフみたいなものでしたから、ひたすらずっとやり続けても問題はないと思えました。体作りを見直すことができたので、満足できた1年間でした」
復帰後、ストレートの質が明らかに変わった。球速も今では最速155キロまでアップした。
もともと脚力の強さは一級品。1年間の雌伏の時期を経て、この脚力が地面からの力を伝えられるようになったことで、キレ・スピード・コントロールのすべてに優れた投手となった。また、「大学代表でもトップレベルの俊足だった」という話もあるほどで、一塁ベースカバーにもあっという間に到着する。よほどの俊足選手でなければ下村を追い越すことは難しいだろう。
「体の大きな選手に負けない活躍をしたい」
下村はもはや「小さいから……」と身長面でマイナスを語られることはほとんどなくなった。ただ、下村自身は他の投手よりも体が小さいからこそ伝えたいことがある。
「“小さいなりにどうやって勝つか”ということはずっと工夫してきたので、それが今になって活かせるようになってきたと思います。僕がプロで長く活躍できれば、同じくらいのサイズの選手に希望を与えられる。今でいえば阪神の村上(頌樹)投手やオリックスの山岡(泰輔)投手のような体の大きな選手に負けない活躍をしたいです」
小さな体に大きな野望と可能性を秘め、下村はプロの世界に飛び立つ。