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[海外遠征の現在地]凱旋門への夢は醒めない
posted2023/10/27 09:03
text by
木南友輔(日刊スポーツ)Yusuke Kinami
photograph by
Photostud
重賞1勝のスルーセブンシーズが4着に善戦した今年の凱旋門賞。しかし、日本馬の挑戦が1頭に留まった事実は、ホースマンたちが紡いできた世界挑戦の歴史が転換期にあることを示している。
「凱旋門賞にアーモンドアイもイクイノックスも挑戦しなかった。凱旋門賞は日本馬の目標ではなくなったのか?」
今年、凱旋門賞への日本馬の挑戦は昨年の4頭から1頭となった。レースウイークの共同会見、海外メディアから飛んだ質問に、唯一の日本馬スルーセブンシーズの尾関知人調教師は毅然と答えた。
「どういった馬を連れていけばいいのかを試行錯誤している段階。勝利が遠のいているわけではない」
今回、スルーセブンシーズ陣営が挑戦を決めた根拠は「軽量の牝馬」「ステイゴールド系種牡馬の産駒」という個性だった。GIを何勝もしたり、圧勝したりした馬ではなく、3月の中山牝馬Sで重賞初制覇、宝塚記念でイクイノックス相手に善戦(2着)した馬が日本の代表だった。地元フランスが誇る無敗の3歳馬エースインパクトは別格の強さだったが、約3馬身差の4着に奮闘した。もちろん出走のためのレーティングは必要だが、体調が整い、展開や馬場がかみ合えば、GI未勝利という格にとらわれる必要はないことをスルーセブンシーズは証明してくれた。逆に、日本でGIを何勝していようと、どんな楽勝劇を演じていようと、その実績が凱旋門賞の舞台で絶対的な武器にはならないことも、日本のホースマンは学んでいるということだ。