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[巻頭提言]“日本馬全滅”から何を学ぶか
posted2022/10/20 07:05
text by
木南友輔(日刊スポーツ)Yusuke Kinami
photograph by
Photostud
「全滅か。やっぱりこうなるか。馬場対策とコンディショニング、両方ともやるのは至難の業。だから転厩するべき。日本馬で凱旋門賞を勝ちたいならば」
信頼するブラッドストックエージェント(馬主や牧場向けに競走馬を代理購買する人)からレース直後にメールが届いた。史上最多4頭が挑んだ今回、どの陣営にも海外競馬に精通した牧場関係者がいて、各厩舎には海外経験が豊富なスタッフやコーディネーターがいた。「今年こそ」という期待感は大きかったが……。'99年エルコンドルパサー、'10年ナカヤマフェスタ、'12、'13年オルフェーヴル、過去4度の2着を超える悲願の初勝利を狙った日本馬は今年も凱旋門賞を勝てなかった。
今年の日本馬4頭は無印。それが自分の結論だった。最も可能性を感じていたのはタイトルホルダーだったが出走馬が確定した時点でブルームの存在が気になった。現地上位人気のルクセンブルクを擁するオブライエン厩舎の先行馬。この馬が速い流れを作ろうとすれば、展開は厳しくなる。結果的に、菊花賞や天皇賞・春のように道中でペースを落とす逃げにはならず、明らかなオーバーペースで最後は歩いてしまった(ラスト1ハロンは15秒46)。前年と異なるローテで挑んだディープボンドはタイトルと同様の脚質。先行激化になれば苦しい。現地で前哨戦を使ったドウデュース、ステイフーリッシュは前哨戦が物足りなすぎた。先着を許した馬たちが凱旋門賞前日のGIIドラール賞で惨敗。日本ダービー馬、凱旋門賞に強いステイゴールド産駒、とはいえ、望みは薄かった。