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直前評価は真っ二つ? ドラ1候補の東洋大・細野晴希「ジキルとハイド」の投球に見るMAX158kmの“底知れぬ潜在能力”「安定感はない。それでも…」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byHideki Sugiyama
posted2023/10/25 11:00
注目左腕の東洋大・細野はどの球団の指名を受けるのか
今年はめまぐるしい1年になっている。春は2部から1部に昇格。「最終的に日本一になりたい。秋に1部優勝して日本一になりたいと思っている」と意気込んでいた。秋季リーグもエースとしてチームを引っ張った。
意地が光ったのは10月17日の中央大戦だった。投げ合う相手もドラフト1位候補右腕の西舘勇陽だ。1回からほどよく力が抜けて変化球をきちんと制球してカウントを整える。3回までに4者から空振り三振を奪うなど「剛よりも柔」の印象だった。
「負けたままじゃ終われない」
この秋、重点的に用いているというスプリットでも空振り三振に抑えるなど、9回を2安打9奪三振2失点で125球の力投。延長10回のサヨナラ勝ちに貢献した。
試合後、ドラフト候補の西舘との投げ合いについて問われると、珍しく語気を強めた。
「ドラフト候補対決とかはどうでもよくて、去年(1・2部入替戦で)中央に負けている。負けたままじゃ終われない。絶対に勝つという気持ちで今日は臨んでいきました」
春季リーグでは制球に苦心し、暴れる球が多かったが、この日は速球も140km台後半に抑えてコントロールを重視。「今までで一番よかった」と話すスカウトもいたほどだ。だが、中1日で迎えた中央大との3戦目先発では再び制球難が顔をのぞかせた。
ダイヤモンドの原石
負ければ入替戦が濃厚な一戦で、打線が1回に2点を先制した。だが、自らの暴投などで追いつかれ、2回も不安定な内容。2回2失点で降板し、チームも敗北。最下位が確定した試合後は悔し涙を流した。
まだ安定感はないが、持っている素材は一級品。まさに「ダイヤモンドの原石」といえる。目利きのスカウトたちも能力を高く買う。