マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「中日2位が社会人No.1野手じゃない“納得のワケ”」「“投壊”ヤクルト上位指名はとことん投手」ドラフト全指名予想《中日・日ハム・ヤクルト編》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/25 06:00
ドラフト目玉候補の上田希由翔三塁手(明治大・183cm93kg)
1位・武内夏暉(國學院大)が、わずか2球団の競合で済んだのには驚いた。やはり、今年は「選り取りみどり」なのだ。左腕が、矢澤宏太(日本体育大→日本ハム1位)と曽谷龍平(白鴎大→オリックス1位)しかいなかった昨年だったら、5球団は重なっていただろう。
デカくて、速くて、コントロールがあって、ツーシームという切り札もある。あとは、プロの水にいつなじめるか……そこだけだ。中継ぎの切り札・清水昇という頼もしい先輩が「道しるべ」としていてくれるのも、心強い。
「勝てる投手=ピンチをしのげる投手」がヤクルト2位指名
勝ちたいから「勝てる投手」を!
勝てる投手とは、つまり「ピンチをしのげる投手」だ。ピンチを背負うと人が変わる。それが、2位指名の上田大河投手(大阪商業大)だ。
ギアが上がるとか、その程度の次元じゃない。殺気というか、狂気というか、近寄りがたいほどのテンションで、速球は150キロに達し、タテのスライダーと高速フォークが地面に突き刺さる。
試合には、その日使えるとブルペンで判断した4種類ほどの変化球を携えて登り、多彩な緩急を編み出しながら凡打の山を築くスタイルだから、先発でも期待できる。例年なら、間違いなく1位でいなくなる実力者だ。
3位・坂井陽翔(滝川二高)と4位・冨士隼斗(平成国際大)は3年後に一軍戦力になってくれれば……。
スライダー、フォークがプロレベルに近い坂井陽翔投手は、高校生でもモノになるまで3年も4年もかからない。1年目の夏あたりからイースタンの実戦でプロの洗礼を受けつつ実戦力を上げて、2年目はイースタンのローテーションで……そんな見通しだ。
155キロをマークして注目されて以降、腰の故障でやや停滞の感があった冨士隼斗投手は、150キロ台を続けて投げられるエンジンの大きさは、教えても、鍛えても、どうなるものではない。天性の馬力を買う。
そして、高校生の大砲候補2門。5位・小笠原蒼(京都翔英高)と6位・明瀬諒介(鹿児島城西高)。左右のロングヒッターだ。
村上宗隆を、祝福のもとにメジャーに送り出すために、確かな後釜を養成しなければならない。
澤井廉はいる。今季イースタン18弾の本塁打王が腕を撫してはいるが、プロ野球にはもっと「大砲」がいてよい。
かつては、ホームランがプロ野球の華。チームには3、4人は大砲がいたのがプロ野球だった。そりゃあ、投手の能力は格段に上がったかもしれないが、20本、30本で「大砲」では、昔のプロ野球の迫力を知っている者としては寂しいかぎりだ。
共に「ロングヒッター」だが、小笠原蒼はムダに振り過ぎず、センターから左中間への打球もライナー性で飛距離を出し、明瀬諒介は投げても150キロ出せる馬力で、振れる魅力のハードパンチャーだ。
<西武・巨人・楽天編へ続く>