猛牛のささやきBACK NUMBER
「珍しく由伸さんが…」の苦境を救ったオリックス・紅林弘太郎「毎日が地獄」を「幸せなこと」に変えた21歳の試練と成長〈“イジリ”は猛反省中〉
posted2023/10/21 11:05
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
JIJI PRESS
ヒリヒリした展開が続くパ・リーグCSファイナルステージで、オリックスが苦しみながらも3年連続の日本シリーズ進出に王手をかけた。
その初戦で、重苦しい空気を振り払う値千金のチーム初タイムリーを放ったのは、21歳・紅林弘太郎だった。
ロッテとのCSファイナルステージ初戦は、オリックスにとってまさかのスタートだった。
もちろんCSファーストステージを戦ったロッテに比べれば公式戦の間隔は空いている。しかもリーグ優勝を決めたのは9月20日。緊迫感のある試合からは1カ月近く遠ざかっていた。10月16日の試合でソフトバンクを劇的なサヨナラ勝利で破って乗り込んできたロッテの勢いは脅威だ。
それでもオリックス側には、「(山本)由伸だから大丈夫だろう」という安心感があったはず。
エースがまさか…立ち上がりの3失点
ところが初回の立ち上がり、なんとも言えない時間が流れた。本来はフィールディングもピカイチのエースが、ピッチャー返しの打球にグラブを出しても、ボールが収まらない。ロッテの先頭・荻野貴司、2番・藤岡裕大の打球が立て続けに安打となり、あっという間に無死一、二塁のピンチに。犠打の後、4番グレゴリー・ポランコに先制の2点タイムリーを許すと、この回だけで5本の安打を打たれ3点を失った。
「由伸が取られた3点というのは、かなり重い3点」
中嶋聡監督の言葉が、この時のチームの雰囲気を物語る。
しかし4回裏、レアンドロ・セデーニョの安打、マーウィン・ゴンザレスの四球で二死一、二塁のチャンスを作る。そこで7番・紅林が、追い込まれてから右中間へ2点タイムリー二塁打を放ち、ベンチに向かって力強く両腕を掲げた。
「いける!」
ベンチと球場の空気が一変した。
8番・宗佑磨も三塁線を破るタイムリーで続き、3−3と一気に追いついた。