多くの名門校から参加した選手同士で練習方法を話し合えることも代表チームならではだ。投手コーチを務めていた比嘉公也コーチ（沖縄尚学監督）とピッチングの話をし、多くの学びもあったという。その中で自分の強みで再確認したこともあった。

「僕は150kmをバンバン投げられる訳ではないですけれど、以前よりは（スピードの）アベレージは少し上がりました。その中でも、緩急というか、球速差をうまく使って抑えられるのは強みですが、単純にもっとスピードを上げていきたいとは思いました。ただ、スピードを求めていく中でもコントロールは大事。（W杯では）甘い球があっても見逃してくれた場面もあったので、そこはもっと上げていきたいです。

　今回、世界一を獲ることができたんですけれど、外国人選手も含めて色んなバッターがいたのでいい経験になりました」

　帰国して約10日後、学校内で全校生徒が集ってのU-18W杯の祝勝会が行われた。前田が入場する前に、これまでの前田の足跡をたどる5分半の映像がプロジェクターで流され、学校をあげて大々的に世界一を祝った。

「アリーナ（体育館）に入って、すごくビックリしたというか……盛大に祝っていただき感謝の気持ちでいっぱいです」

　日本代表のユニホーム姿で場内に現れた前田は、全校生徒からの大きな拍手に乗って入場。舞台前で花束を受け取ると引き締まった表情を見せた。

学校内で行われた祝勝会。花束を受け取った前田の表情　©︎Fumi Sawai

「ドラフト1位で行きたい気持ちはあります」

　その後の囲み取材でドラフトへ向けた思いを口にした。

「ドラフト1位で行きたい気持ちはありますが、子供の頃から夢見てきたプロ野球の世界に挑戦できるスタートラインにまず立ったので。当日はどうなるか分からないですけれど、そこに向けた準備はしていきたいです。

（ドラフトまで）あと1カ月ほどなので、1日1日を実りあるものにしてベストな状態にしていきたいです。プロ野球（の世界）に入ることが目標ですし、叶ったらプロを代表するピッチャー、日の丸を背負うようなピッチャーになりたいです」

　1年秋に高校デビューした当初から「世代最強」とされ、さらにドラフト1位の素材とまで言われた。苦悩の日々を経て、最後の最後に“らしさ”を見せて高校野球を有終の美で終えられたことは、次の世界へ何かを繋げられるはずだ。

　迎える10月26日は、一体どんな表情の前田を見ることができるのだろうか。

　高校野球の星から、日本を代表する星へ――。次の世界での前田の躍動が楽しみでならない。

＜「履正社・森田大翔」編に続く＞