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「ボールを持つと人が変わる」“シャイな爆速ウイング”ジョネ・ナイカブラの愛され秘話…“無印”だった留学生がラグビー日本代表になるまで
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2023/09/28 17:08
チリ戦、イングランド戦に続き、サモア戦の先発メンバーにも名を連ねたジョネ・ナイカブラ(29歳)。摂南大学時代は無名に近い存在だった
望月が弾むような声で振り返る。
「すごく良かったので、これは獲りましょうということになりました。彼はすごくシャイなんですけど、ボールを持つと人が変わるんですよ。あれ、あのシャイなジョネはどこへいったの、というぐらいに堂々と、思い切ってプレーするんです」
なぜ代表初キャップ獲得まで時間がかかったのか?
2018年の東芝ブレイブルーパス東京加入後は、長期の離脱を強いられるようなケガと無縁だ。摂南大当時との変化を、ジョネ自身はこう話している。
「大学までは食事に気をつけていなくて、食べるものを管理せずに好きなものを食べていました。東芝に入ってからは、何を食べるのかはもちろん、練習以外の時間の過ごし方も、良く考えるようになりました。そうやって気づいたのは、リーチさんの存在があったからです。いまは日常生活からコントロールできています」
加入1年目から試合に絡んでいき、21年、22年と日本代表に招集された。ところが、初キャップの獲得はW杯開幕直前の23年7月まで待つこととなる。
なぜジョネは使われなかったのか。望月には思い当たるところがあった。
「去年のジャパンで1試合も出ずに終わってしまって、ウチから参加した他の選手に『ジョネはどうしたの?』と聞いたら、『ボールを持ったら走ればいいのに、ジョネはパスをするんです』と言うんです。代表のプランとしてそういうものもあるのでしょうが、それは選手によって使い分けていいところがあるはず。でも、ジョネは真面目だからそのとおりにやって、持ち味を発揮できなかったり、なかなか馴染めなかったり、というところがあったんじゃないかと」
現在のジョネは、控えめでも遠慮がちでもない。日本代表でも東芝と同じようにプレーできている、と望月は見る。
「21年、22年と呼んでもらって、徐々に環境に慣れていって、彼のなかでジャパンは自分のチームという認識になっていった。力を出せる環境が整っているのでしょう。だからこそ、7月のテストマッチからトライが取れていて、W杯のチリ戦のトライにもつながっているんじゃないかな、と思うんです」