「トリプルアクセルと4回転トウループは、踏み切る時の上半身の使い方が違います。トリプルアクセルを跳んだ後、数秒後には4回転があるので、すぐに感覚を切り替えなければならない。女子にとってはそこが難しいところ。トリプルアクセルを跳べなくても、4回転を跳べる女子選手がいるのも、それが理由の1つでしょう」

　一方、この試合では4回転に挑戦するジュニア女子が現れていた。アメリカのミア・カリン（15）だ。フリーに向けて4回転トウループと4回転サルコウの練習に励んでいた。それを見た島田は、気後れすることなく、自分も前に進むことを選んだ。

「カリン選手が4回転を練習しているのを見て、すごく刺激的でした。特に4回転トウループは、絶対に失敗しないなというくらい安定していて、4回転サルコウも何度も降りていたので、すごいなと思います。自分ももっと練習しないといけないな、やらないといけないなと思いました」

フリーの前に手を握る島田麻央と濱田美栄コーチ　©︎Asami Enomoto

セオリーなら4回転“回避”だが…

　迎えた本番前の6分間練習。島田は、一度も4回転ジャンプが決まらなかった。セオリーでいえば、4回転は“回避”だ。しかし迷いはなかった。

「小学生の頃から、浅田真央さんがトリプルアクセルに挑戦し続ける姿に憧れて、力をもらってきていました。だから、やっぱり自分も（大技に）挑戦し続ける姿を見せたいと思いました」

　濱田コーチから「絶対にプレッシャーに勝てる」と言われて、本番の演技へと送り出される。プログラムは、神への祈りをテーマにした『Benedictus』。荘厳な空気感のなか、トリプルアクセルをジャッジの眼の前でピタリと降りた。そのまま緊張感を保って4回転トウループへ。回転が足りずに転倒したが、曲の世界観はまったく崩さずに滑り続け、残るジャンプはすべて成功させた。

フリーでも果敢にジャンプに挑む島田麻央　©︎Asami Enomoto

「今回はとにかく思い切りやろうと思いました。今思うと、4回転はもうちょっと力抜いていても良かったかなとは思います。でも（調子が悪いなか）パンクして1回転になって悔いが残るよりは、思い切り行ったほうが良いと思ったので、後悔はしていないです。（2本の挑戦を）続ける予定です」

単にノーミスの演技を目指すのではなく

　演技最後は、ショートで喝采を浴びたI字スピンと、レイバックスピンを続けて盛り上げる。

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