減量苦とパフォーマンスの質を考えて、早い段階でまた階級を上げたいと中谷の陣営が考えるのは理解できます。長身の中谷が今後、どこまで上げられるかは現状では判断が難しいですね。これから先、階級を上げた際、どんな肉のつき方をするか、どれだけの力を保てるかは見てみなければわかりません。

　井上尚弥に関しても、スーパーバンタム級に上げてのフルトン戦の前、“パワーを維持できるかどうか”がポイントとして挙げられていました。井上は昇級するたびに底知れぬ力を披露してきましたが、中谷にもそれができるかどうか。痩身の中谷は肉が付きにくい身体にも見えるため、どのウェイトクラスで戦うか、より慎重に考慮していかなければいけないのかもしれません。

　これは私の希望ですが、スーパーフライ級には役者が揃っているだけに、中谷にももうしばらくは留まってほしいという気持ちもあります。IBF同級王者フェルナンド・マルチネス（アルゼンチン）以外の対抗王者はベテランであり、前述通り、ビッグネームに対戦を承諾させるのは容易ではないのは事実です。それでもこの階級の重鎮たちとの決戦を実現できたら、それは中谷のキャリアにとって大きな意味を持ちます。

　特にエストラーダをKOするようなことがあれば、一気に評価、知名度を引き上げることが可能です。その時にはPFPトップ10入りも確実でしょう。井上尚弥が去ったバンタム級には現状スターと呼べる選手が不在という事情も踏まえ、あくまで個人的な想いですが、中谷にはもうあと何戦かはスーパーフライ級で戦ってほしいものです。

©︎Hiroaki Yamaguchi

「初めて見たのはメイウェザー戦」

　123パウンド契約8回戦
　那須川天心　8回判定　ルイス・グスマン（メキシコ）

　私が那須川を知ったのは数年前、エキジビションマッチでフロイド・メイウェザー（アメリカ）と戦った試合が最初でした。残念ながらイギリスでは日本のキックボクシングの興行を見る機会はそれほど多くはなかったのです。エキジビションの目的とは大抵の場合、スキルを誇示して商品価値を上げること。那須川との対戦で、あれほど体格差のある相手をあっさりとKOしてしまったメイウェザーは馬鹿げていると呆れさせられたものでした。

©︎Takuya Sugiyama

　時は流れ、プロボクサーに転向2戦目となった今回の試合で、那須川は初回にダウンを奪い、文句のない判定勝ちを収めました。確かな技術を持っていますし、ダウンを奪ったパンチは鮮やかでした。カリスマ性に溢れ、現時点でも上質なアトラクションです。試合後のインタビューでのマイクパフォーマンスもよく、注目度の高い選手であるのは伝わってきました。

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