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ボクシングPRESSBACK NUMBER
中谷潤人(25歳)は井上尚弥のように階級を上げるべき? 軽量級に詳しい英国人記者の見解は…那須川天心の“率直”な感想も「まだ後方にいる」
posted2023/09/25 11:05
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Takuya Sugiyama
世界中のボクシングファン、関係者の視線が再び日本に集中した。9月18日、有明アリーナで寺地拳四朗(BMB/31歳)、中谷潤人(M.T/25歳)、那須川天心(帝拳/25歳)をフィーチャーして行われたビッグイベントは欧米でも中継、配信された。軽量級を席巻する3人がそれぞれ勝利を手にした興行は関係者の目にはどう映ったのか。
試合後、リングマガジンの元編集人(マネージング・エディター)であり、現在はスポーティングニュースで健筆を振るうイギリス人ライター、トム・グレイ氏に意見を求めた。リングマガジン、スポーティングニュースの両方でパウンド・フォー・パウンド・ランキング(PFP)選定委員を務めるグレイ氏は軽量級、アジアのボクシングにも精通しており、その言葉には常に説得力がある。
全2回の最終稿では、中谷潤人と那須川天心の試合をレビューする(前編では寺地拳四朗の4団体統一王者への期待を明かしている)。
KOならずも「評価されて然るべき」
WBO世界スーパーフライ級タイトル戦
中谷潤人 12回判定 アルヒ・コルテス(メキシコ)
中谷対コルテス戦の決着が判定までもつれ込んだことには少々驚かされました。前戦のアンドルー・モロニー(オーストラリア)戦では現時点での年間最高KOと目される衝撃的な勝ち方をした後で、中谷への期待感は高まっていました。同時に井岡一翔(志成)、フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)といったビッグネームとの対戦が熱望されるようにもなっていました。
生涯のハイライトになるような勝利を挙げると、それ以降、ビッグファイト以外ではどんな相手でも倒すだろうと考えられてしまうのは仕方ないこと。それでも綺麗に勝てないことはあるもので、過去にはロイ・ジョーンズ、バーナード・ホプキンス(ともにアメリカ)、ジョー・カルザギ(イギリス)、オスカー・デラホーヤ(アメリカ)といったスーパースターですらも、格下と見られた相手に苦しむか、判定までもつれ込むことがあったのを思い出します。毎回、ファンの希望通りの勝ち方はできないのです。
ラスベガスで戦った前回とは違い、寺地拳四朗、那須川天心のアンダーカードで起用された今戦での中谷はこれまでほどモチベーションがかき立てられなかったのだとしても不思議ではありません。もっとも、そのような状況でも、実力のある挑戦者との初防衛戦を一方的な判定で制した中谷は評価されて然るべきです。