まだスーパーフライ級に上がって日がないというのに、中谷はこの階級では飛び抜けた長身で、リーチも長く、サイズ面で大きなアドバンテージがあります。体格の利に加え、パワーも素晴らしいものがあり、非常に積極的に攻める選手。井上尚弥と同じようなキラーインスティンクト（闘争心）を備えているようにも見えます。

　様々な距離で戦えることまで含め、中谷は穴の見当たらないサウスポーですね。何より素晴らしいのは、すでに2階級制覇を果たしたにもかかわらず、まだまだ伸びしろが残っているように思えることです。

コルテスの顔面を捕える中谷の左ストレート　©︎Takuya Sugiyama

「相手が強いほど力を出すタイプ」

　これほどの強さを誇示してきた中谷は次戦、誰と戦うべきなのか。それは私にとっても答えるのが難しい質問です。エストラーダ、ローマン・“チョコラティート”・ゴンサレス（ニカラグア/帝拳）といった同階級のレジェンドたちは力を残していますが、キャリアの現時点で中谷と対戦するのは彼らにとって賢明なアイデアとは思いません。

　エストラーダは経験豊富な大ベテランで、いまだにPFPのトップ10に入るほどの高評価を保っています。百戦錬磨のエストラーダなら、中谷ですらも捌き切ると見る関係者もいるのかもしれません。ただ、私がエストラーダ陣営の人間だったなら、中谷のそばには近づきもしないでしょう。

　最も理に叶うビッグファイトがあるとすれば、井岡対中谷の日本人新旧対決でしょうか。しかし、ジョシュア・フランコ（アメリカ）との再戦での井岡の出来がよかったことを考慮しても、中谷との対戦に向かうのは賢明ではないと思います。井岡もまた長いキャリアを積み重ね、消耗しているはず。とても聡明で、レベルの高いテクニシャンではありますが、現状では中谷が優位だと見ています。

フアン・フランシスコ・エストラーダ　©︎Getty Images

　これは私の考えですが、中谷は相手が強いほど、ステージが大きくなるほど、力を出すタイプに見えます。だからこそ、最新のコルテス戦ではモチベーションが最高潮ではなかったと考えたわけです。エストラーダ 、井岡との対戦ではその面での心配はいらないでしょう。まだ対抗王者に勝ったわけではないですが、群雄割拠のスーパーフライ級でもすでに中谷こそがベストファイターだというのが私の意見です。

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