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久保建英「幻のマドリー戦ゴラッソ」に余裕の笑み→クロース置き去り、先制点演出…“魔法使いタケ”のステップアップをカメラマンは見た
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/09/20 17:06
レアル・マドリー相手にまたしても存在感を見せた久保建英。先制ゴールのバレネチェアと喜びを共にする姿を目前で撮った
悔しさこそあるものの、顔には笑みさえ浮かべていた。
その表情からはマドリー相手に次のチャンスを疑わない余裕すら感じさせると共に、思い通りのプレーを単純に楽しんでいるようでもあった。ある種ゾーンに近いものに入っていたのかもしれない。実際、12分にもブライス・メンデスのシュートをお膳立てし、立て続けにマドリーゴールを脅かしている。
前半終盤には、プレスをかけにきたクロースをトラップひとつで置き去りにすると、そのまま30メートル以上を独走。ボックス内で立ち塞がるフランと、追い縋るクロースの間を割る様に切り込んでシュートを放っている。惜しくもシュートはケパに弾かれてしまったが、枠を捉えた鋭いシュートだった。
久保から感じる“1段階ステップアップ”
更にその直後にもボックス内で、ボールを晒すように構えると――迂闊に飛び込めないフランを筆頭に、数秒間マドリー守備陣を棒立ちにさせている。
そして、目の端でスペースへと走り込むメリノを捉えると、ふわりとパス。メリノのヘディングシュートはケパの好セーブにあったが、時間と空間を自在に操る姿は、プレーのタイプこそ違えど、魔法使いと云われたシルバに通ずるものがあったか。
好調を維持する久保だが、更に1段階ステップアップしたことを感じさせた。
この頃には、マドリーも久保を止めるためにファールを厭わない様になっており、チュアメニにイエローを出させ、さらに前半終了間際にはクロースをまた抜きしてファールで倒されている。
バルベルデの衝撃的な“まさに弾丸ミドル”
ただ、前半も中盤以降は、地力に勝るマドリーのペースが続いた。トップ下に入るベリンガム、最前線のロドリゴらに決定機を作られるも、ボランチに入るスビメンディ、GKレミーロの決死の守備もあって、1点リードのまま後半を迎えた。
しかし、後半開始早々、バルベルデの1発にやられてしまう。守備では久保に後手に回るフランだったが、サイドをかけ上がりクロスを送ると、ボックス外で合わせたバルベルデのシュートはまさに弾丸。鈍い音を立てポストに当たったボールはそのまま逆サイドのネットに吸い込まれた。
さらに60分、フランのクロスにホセルが頭で合わせマドリーが逆転に成功した。
苦しい状況の中でも久保がフル出場した意味
後半も久保は前線で起点となったが、フラン、クロースの対応が改善し、また久保へのパス供給自体が制限され、攻撃の機会は少なくなった。